参議院政倫審 きょう開催 安倍派のキックバックどう説明か(2024年3月14日『NHKニュース』)

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、参議院では14日、政治倫理審査会が開かれ、安倍派の世耕 前参議院幹事長ら3人が出席します。
安倍派でパーティー収入のキックバックが続けられたいきさつなどについて、どのような説明が行われるかが焦点です。

今回の問題を受けて、参議院では14日政治倫理審査会が開かれ、いずれも自民党安倍派の世耕 前参議院幹事長、西田昌司氏、橋本聖子 元オリンピック・パラリンピック担当大臣がそれぞれ弁明し、質疑が行われます。

参議院の審査会で弁明と質疑が行われるのは初めてで、報道関係者にも公開されます。

安倍派では、おととし4月に当時会長だった安倍元総理大臣が派閥から議員側へのキックバックを取りやめる方針を決めたものの、同じ年の7月に安倍氏が亡くなり、キックバックが続けられたことが分かっています。

これについて野党側は、先の衆議院の審査会での幹部の説明に食い違いがあったと指摘していて、キックバックの取り扱いをめぐる幹部らの協議に出席したとされる世耕氏がどのような説明を行うかが焦点となります。

また、関係者によりますと、安倍派では、参議院選挙の年に開いたパーティーは、改選となる議員にパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックしていたということで、こうした点についても質疑が行われる見通しです。

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きょうの審査会の焦点は 

これまでの議員の説明などによりますと、安倍派では、おととし4月に当時会長だった安倍元総理大臣が、派閥から議員側へのキックバックをとりやめる方針を決めたものの、7月に安倍氏が亡くなり、キックバックが続けられたことがわかっています。

その経緯で重要なポイントとされるのが、安倍氏が亡くなった翌月・8月に行われた派閥幹部らの協議です。

当時、会長代理だった塩谷・元文部科学大臣と下村・元政務調査会長、事務総長だった西村・前経済産業大臣参議院側を代表して世耕・前参議院幹事長が出席したとされます。

この協議について、先の衆議院政治倫理審査会で、西村氏は「ノルマ以上に売った議員から『返してほしい』という声があり、どう対応するかを共有したが、結論は出なかった」と説明しました。

一方、塩谷氏は「多くの所属議員から『困っている』という意見があり、『ことしに限って継続するのはしかたがないのではないか』という話し合いがなされた。『継続していくしかないかな』という状況の中で終わったと思う」と述べました。

これについて立憲民主党などは説明に食い違いがあるとして、さらなる実態解明が必要だとしています。

また、この協議をめぐっては、下村氏がことし1月の記者会見で「還付分は各議員個人の資金集めパーティーに上乗せし、収支報告書で合法的な形で出すという案が示された」と述べています。

この「合法的な形」という発言について、野党側は安倍派幹部が違法性を認識していた可能性を示していると指摘しています。

さらに安倍派では、参議院選挙の年に開いたパーティーについては、改選となる議員にパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックしていたこともこれまでの関係者への取材でわかっています。

審査会では、政府や党の要職を歴任し、安倍派の幹部を務めてきた世耕氏がこうした点についてどのような説明をするのかが焦点となります。

世耕弘成氏の経歴と政治資金めぐるこれまで 

世耕弘成氏は参議院和歌山選挙区選出の当選5回。安倍元総理大臣に近かったことで知られ、経済産業大臣官房副長官などを歴任しました。

2019年からは自民党参議院幹事長を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。また、安倍派で行われていた所属議員へのパーティー収入のキックバックの取り扱いを協議した幹部の1人とされています。

今回の問題を受けて、党が行ったアンケートには、政治資金収支報告書に記載していなかった派閥のパーティー券収入がおととし・2022年までの5年間で1542万円あったと報告しています。

世耕氏はことし1月の記者会見で「政治資金の管理は秘書に任せきりの状況だった」と釈明した上で、「私の管理監督が不十分だったという指摘は否定できない」と陳謝しました。

西田昌司氏の経歴と政治資金めぐるこれまで 

西田昌司氏は参議院京都選挙区選出の当選3回で、これまでに自民党政務調査会長代理や参議院国会対策委員長代行などを務めました。

去年10月に参議院の政治倫理や選挙制度に関する特別委員長に就任しましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けてことし1月に交代しました。

今回の問題を受けて党が行ったアンケートには、政治資金収支報告書に記載していなかった派閥のパーティー券収入がおととし・2022年までの5年間で411万円あったと報告しています。

西田氏は先週、政治倫理審査会に出席する意向を表明した際、「組織的に派閥の記載漏れや裏金化をやっていたことを私も初めて知った。経緯を説明するのが派閥の幹部の責任であり、していないことが政治不信の一番のもとだ。そのことも含めて意見を言いたい」と述べていました。

橋本聖子氏の経歴と政治資金めぐるこれまで 

橋本聖子氏はは参議院比例代表選出の当選5回。

スピードスケートや自転車競技の選手として7回オリンピックに出場し、参議院議員となった後は、オリンピック・パラリンピック担当大臣や自民党参議院議員会長などを歴任しました。

2021年に森・元総理大臣の後任として、東京オリンピックパラリンピック組織委員会の会長に就任した際に政治的中立性を明確にするとして自民党を離党し、その後、復党しました。

所属していた安倍派では、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーを務めました。

今回の問題を受けて党が行ったアンケートには、政治資金収支報告書に記載していなかった派閥のパーティー券収入がおととし・2022年までの5年間で2057万円あったと報告し、6番目に多い額となりました。

ことし1月には、記者団に自身が派閥からキックバックを受けていたことを説明し「政治不信を招いたことを深く反省している」と陳謝していました。

「政倫審」開催のいきさつは

政治倫理審査会は、議員が政治倫理に関する規範に著しく違反して、政治的、道義的に責任があるかどうかを審査する場として衆参両院に設けられていて、審査会の委員が申し立てをするか、疑惑を受けた議員本人が申し出ることで開かれます。

先に衆議院で開かれた審査会は、岸田総理大臣と、安倍派と二階派の事務総長を務めた5人が、みずから審査会に審査を申し出たことで開かれました。

一方、今回の参議院の審査会は、立憲民主党など野党4党が
自民党の議員31人と
▼在宅起訴されて自民党を離党した議員のあわせて32人の出席を求めて開催を申し立て、全会一致で弁明と質疑を行うことが決まりました。

これを受けて、審査会は32人に対し出席するかなどの意向確認を行いました。

その結果、いずれも安倍派の▽世耕・前参議院幹事長と▽西田昌司氏、▽橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣の3人が出席する意向だと回答しました。

そして、与野党で日程や公開のあり方などを協議し報道関係者にも公開する形で3人の審査を行う運びとなりました。

参議院の審査会で弁明と質疑が行われるのは初めてです。