神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)は、厚生労働省による救命救急センター(3次救急)の評価で9年連続全国1位となり、「救急日本一の病院」として知られる。神戸地域の命綱の役割を長年果たしてきたが、
365日24時間断らない方針を掲げる現場は、交流サイト(SNS)などで「ブラック職場」と陰口をたたかれる。4月から始まる医師の働き方改革を前に、中央市民病院は「脱ブラック」の取り組みを進める。その本気度を探った。
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「つい数年前は、残業が月100時間を超える職員が半数以上を占めていた。ブラックだと批判されても仕方ない」。木原康樹院長(69)はSNSの批判をあっさり認めた。
中央市民病院は過去5年間で2回、労働基準監督署から是正勧告を受けている。医師1人が労使協定に基づく上限を超えて残業した▽看護師ら826人がカルテの確認などで早く出勤したのに残業に反映させなかった-との指摘だ。7年前にも医師ら75人の残業について是正勧告を受けている。
そんな忙しい職場がどうやって悪評を返上するのか。木原院長は「まずは意識改革が重要」と強調する。
■変わる応召義務
医師法は医師の「応召義務」を定めている。患者に365日24時間対応する義務が、かつては医師一人一人に課せられていた。それゆえ、勤務医は夜間も土日祝日も病院にいるのが当たり前だった。
がんじがらめの制度は、2019年の厚生労働省通達で大きく変わる。医師一人一人に対する義務が解かれ、勤務時間外であることを理由に診療を拒むことも正当化された。
だが、長年染みついた行動原理を変えるのは難しい。「そこを変革しなければならない」と木原院長は強調する。
中央市民病院は22年3月、働き方改革のグランドルールを策定し「長時間労働=美徳ではない」「ワークライフバランスの取れた働き方を」と呼びかける。一般企業では今や当然の理念だが、医療現場ではそこから説かねばならない。
具体策として、当直明けは必ず午前中に退勤する▽残業の申請・承認は原則として毎日行う-などのルールを打ち出した。
また、勤務時間に含まれず、長時間労働の隠れみのと批判される「自己研さん」や兼業の状況もシステムに入力させ、若手医師らに過重な負担がかかっていないかを把握する。
では、勤務時間が上限を超えた医師は、目の前にいる患者の診療を断るのだろうか。
木原院長は「診療チームとして対応し、極力受け入れたい」としつつ「断らない方針を維持するには、病院の統合などで医師の集約化を図る必要がある」と強調する。