◆4月時点で0歳児は「待機ゼロ」だったが…
「複数の認可保育所に申し込んだけど入れず、ほかに選択肢がなかった」
記者会見に臨む亡くなった男児の父親(左)と母親
昨年4月時点で区内の0歳児の待機児童はゼロだった。保坂展人区長は先月の会見で「4月にはゼロでも、生まれた月によっては認可保育所は定員が埋まってしまう。常に入れる状態をつくるにはどうしたらいいか、課題として受け止めている」と表明。事故の検証委員会で議論を始めた。
◆欠員補充に1歳児の引き受け求められる保育所
年度途中に生まれる0歳児向けの枠の確保には課題がある。保育所の収入は主に在籍する子どもの数を基に決まるため、保育所としては常に定員をいっぱいにしておきたい。年度途中に入る園児向けに欠員を抱えていると、経営悪化につながる恐れがあるわけだ。
欠員を出さないことや待機児童対策のため、区は0歳児が定員を下回った保育所は代わりに1歳児を引き受けるよう求めていた。これが結果的に、0歳児の枠を狭める形になっていた。
◆「常に入れる状態にするには課題が大きい」
自治体によっては、年度当初は、保護者の就労にかかわらず定期的に通う未就園児で一時的に定員を埋め、途中で0歳児の受け入れが必要になれば、転換できるようにしている。区も今回の事故前から2024年度に実施する方針だった。
保育所は0歳児の欠員分を1歳児か、未就園児にするかなど調整するが、0歳児の途中受け入れにうまくつながるかは分からない。区保育認定・調整課の松岡敏幸課長は「0歳児は保育士の配置や設備面でも基準がより厳しい。常に入れる状態にするための課題は大きい」と頭を悩ませる。
◆欠員分に独自補助する自治体も
0歳児の枠を確保するため欠員分に対し、独自に補助する自治体もある。足立区は4~9月の半年間、欠員1人当たり月額14万円余を施設への運営費に加えて支給している。22年度は私立認可112園のうち約半数が利用し、計約6400万円を支出した。
この制度を運用しても、足立区の0歳児の待機児童は昨年、4月時点でのゼロから10月は37人に増えたという。私立保育園課の蜂谷勝己課長は「0歳児は年度途中からの需要が多い。保育士が確保できないから受け皿がない、という事態は避けたい」と話している。