早稲田大学が共通テスト利用の入試に積極的で、従来にも増して難関国立大の併願先として選ばれるようになった。慶応大学はもともと独自の入試科目パターンなので、首都圏の私立大専願受験生のメインターゲットがMARCHに絞られ、激戦化が進んでいる。
親の世代から見ると、軒並み「MARCH不合格」と驚きの合否結果で唖然とすることが少なくない。
ところがその併願先であった日東駒専は、相次ぐ不祥事による日本大学の志願者大幅減もあり、人気上昇中の東洋大学を除き、あまりぱっとしない。
慶応内の普通じゃない系列中学校の序列 伝統ある「普通部」を「中等部」が逆転しつつある納得の理由
そこでMARCHなど理工系学部もそろえた総合大学と違って、最近、文系の都会派中堅大学のイメージの枠でくくられてきた「成成明学国武独」に注目が集まりつつある。 成蹊大学・ 成城大学・ 明治学院大学・ 國學院大學・ 武蔵大学・ 獨協大学である。それぞれが独自の道を歩んでいる印象だが、学力偏差値でもMARCHクラスの学部も増えている。
成蹊大学だけは、昔から理工学部がある。安倍元首相の出身校として話題を呼んだが、もともとルーツが三菱系の旧制成蹊高校で、就職に強い。これが効いて、法・経済・経営などはMARCHクラスの難易度となっている。
2024年入試では、経済を除く全学部で一般選抜志願者が大きく伸びている。特に法学部は法科大学院もあり、司法試験でも実績がある。2026年に国際共創学部(仮称)の新学部を構想中だ。
成城大学は、学生のうち男性が6割弱を占める成蹊大学と対照的に、女性が6割を占める。有名芸能人のOBやOGも目立つ。文芸学部がよく知られており定員が一番多い。ユニークな社会イノべーション学部も、志願者数は上昇中。特に法学部が大きく志願者を伸ばしている。女性裁判官や弁護士など法曹女子が話題になっているうえ、公務員人気もジェンダーレスを背景に、特に女子の志願者も増えている、と推測できる。
キャンパスは高級住宅地のイメージのある小田急線成城学園にあり、その立地も人気の一要因だろう。 明治学院大学は、公認心理師の先達ともいえる心理学部やグローバリズムを見据えた国際学部などで、以前から学部の多様さで注目されてきたが、24年入試では新たに情報数理学部がスタートした。文理融合型だが、同大学で初の理系学部で話題を読んだ。
明治大学総合数理の人気急上昇でみられるように、データサイエンスやAI時代を見据えた内容で注目されている。24年入試では、他学部に比べ志願倍率が低いが、受験生の間で理解が深まれば、上昇気流に乗りそうだ。
獨協大学は昔から外国語学部で名が知られており、特に大学名にあるようにドイツ語教育では定評があった。ただ最近は、埼玉県の草加市キャンパスで、受験生にとって、やや「立地に難あり」といわれてきた。しかし、その伝統と実力で最近は見直されつつある。伝統の法学部・経済学部に加えて、長い外国語教育の実績を生かした国際教養学部も注目されつつある。
國學院大学は、今や全国の大学駅伝で上位争いの常連で名をはせ、地方の受験生にも知られるようになった。神道文化学部がルーツなのでイメージが古いが、渋谷エリアのシティキャンパスだ。有名作家も輩出している国文(文学部日本文)学部が有名で、中・高の国語科教師も多い。その伝統を踏まえて、初等教育や子ども支援などを学ぶ人間開発学部は、ネーミングが仰々しいが、伝統を踏まえて実績を上げれば面白そうだ。観光まちづくり学部も同様で、卒業生が実績を上げるかどうかがカギとなりそうだ。
武蔵大学は旧制武蔵高校で、伝統校だ。ただ総学生数が5000人未満で、やや地味な印象だ。人文・経済・社会・国際教養(2022年度新設)の4学部で、文系大学のイメージである。昔から「ゼミの武蔵」といわれ、1年次からゼミ必修というその少人数教育には定評がある。キャンパスも東京都区内であるが、練馬区なのでシティキャンパスとはいいがたい。それだけに地道に勉強するにはよい環境ともいえそうだ。 (木村誠/大学教育ジャーナリスト)