アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞の各賞の発表がロサンゼルスで行われ、視覚効果賞に山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が選ばれました。
視覚効果賞を日本の作品が受賞したのは初めてです。
山崎貴監督は授賞式で「私たちはここに立っている。この賞は誰にでもチャンスがあることを証明してくれた。やったぞ!」と英語でスピーチを行いました。
「ゴジラがたくさんの扉を開いてくれた」
「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督は、受賞後の記者会見で今後の活動について「ゴジラがたくさんの扉を開いてくれたので、ここから新しい冒険が始まるのではないかと思う。今までとは違う可能性が出てきていると思う」と述べました。
そのうえで「日本の映画が海外でもある程度興行できれば、日本の映画の環境は変わっていくし、私たちで変えていかないといけない。そのためにもこれからの行動が重要になってくると思う」と述べました。
また、今回のゴジラのデザインについて問われ「いろいろなゴジラのデザインを見て『これこそ、ゴジラだ』という形を模索しました。今回は核兵器と戦争の象徴であることを強く打ちだしたかったので、みるだけでそういう恐怖が迫ってくるという観客の潜在意識に働きかけるようなものにしたつもりです」と述べました。
そして、ゴジラが映画「オッペンハイマー」の映し鏡のようになっているのではないかという記者の質問に対し「映画を作ったときは意図していなかったが、できあがったときには世の中が緊張した状態にあった。ゴジラは戦争の象徴であり、核兵器の象徴でそれをしずめるという話だが、今、それをしずめることを世界が望んでいるのではないかと思う。オッペンハイマーに対するアンサーの映画は日本人としてはいつか作らないといけないのではないかと思う」と語りました。
監督としての受賞は「2001年宇宙の旅」以来 史上2人目
アカデミー賞の「視覚効果賞」は、その年に公開された映画の中で最も優れた視覚効果、「ビジュアルエフェクツ」=VFXを用いた作品に与えられ、これまで「スターウォーズ」や「タイタニック」、「アバター」などの大ヒット作が受賞してきました。
「ゴジラ-1.0」でVFXを担当したのは山崎貴監督で、東宝によりますと、監督として「視覚効果賞」を受賞したのは、「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督以来、55年ぶり、史上2人目ということです。
「視覚効果賞」の受賞はアジア圏の映画では初めてで、今回のアカデミー賞では、「ミッション:インポッシブル」シリーズやマーベル作品などの人気作がノミネートされる中、ハリウッドの大作と比べると少ない予算で製作されながらも受賞を果たしました。
「ゴジラ-1.0」は2023年、日本で公開された実写映画では1位のヒットを記録しているほか、アメリカでも邦画の実写作品として歴代1位、外国語の実写作品としては歴代3位の興行収入を記録しています。
主演 神木隆之介さん 浜辺美波さんがSNSで祝福
東京 日比谷 ゴジラ像前で記念撮影する人の姿
ゴジラ像が設置されている東京 日比谷では、アカデミー賞の受賞を知らせる幕が設置され、道行く人が、像の前で記念撮影をする姿が見られました。
30代の男性は「アカデミー賞の受賞、よいニュースを久々に聞きました。「ゴジラ-1.0」は2回見ましたが、臨場感がすごいです。日本の特撮が好きなので、世界に認められたようで、すばらしいと思います。」と話していました。
ゴジラのフィギュアを持って映画を見に来たという30代の男性は「幼稚園のころから20年くらいゴジラのファンですが、こんな日が来るとは思わずうれしいです。アカデミー賞を取れるなんてめったにないので、もう一度見ておきたいと思って映画を見に来ました」と話していました。
山崎監督 受賞前に「フィフティー・フィフティー」
長野県岡谷市でロケ 監督「建物を残してくれて感謝」
「ゴジラ-1.0」は、長野県松本市出身で「ALWAYS 三丁目の夕日」など、高度な映像表現作品を送り出している山崎貴監督が、脚本やVFXも担当しました。
2022年5月には長野県岡谷市で3日にわたってロケが行われ、市民などのべ200人ほどがエキストラとして出演しました。
使われた旧岡谷市役所庁舎は1936年に完成したタイル貼りの外壁とかわら屋根が特徴のモダンな建物で、国の登録有形文化財になっています。
山崎監督は去年10月に岡谷市を訪問した際、「昔の雰囲気を持つすばらしい建物を当時のまま残してくれた岡谷市に感謝します。建物は中盤の大切な場面に登場しますが、地元のエキストラの人たちにも協力してもらい、よいシーンが撮影できました」と振り返っていました。
岡谷市内の映画館 観客から喜びの声
山崎貴監督が長野県岡谷市などでロケを行った「ゴジラ-1.0」がアカデミー賞の視覚効果賞を受賞したことを受け、作品が上映されている岡谷市内の映画館では、観客から喜びの声が聞かれました。
岡谷市は「ゴジラ-1.0」のロケ地となり、市内唯一の映画館では、山崎貴監督のサイン入りポスターや撮影風景を紹介する写真などが展示されています。
11日も午前中に作品の上映が行われ、見終わった人たちからは受賞を喜ぶ声が聞かれました。
長野県諏訪市から夫婦で訪れた60代の女性は「前から見たいと思っていたのですが、オスカーを受賞した日に見ることができてうれしいです。戦後の銀座や海にゴジラが現れる映像は迫力があり見入ってしまいました。ふだんから見慣れている岡谷市の建物も登場し、地域の誇りです」と話していました。
また、夫の60代の男性は「ゴジラは過去の作品も見ていますが、今作は海のシーンなどにリアリティーがあり、すごかったです。監督も松本市の出身ということでうれしいです」と話していました。
米アカデミー賞に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」 鈴木敏夫氏「心底うれしい」 「ゴジラ—1・0」は視覚効果賞(2024年3月11日『東京新聞』)
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