「再審」議連発足 法改正で冤罪被害者救え(2024年3月10日『西日本新聞』-「社説」)

 無実の人に刑罰を与え続けるのは、国家による犯罪に等しい。国会は不備が指摘されている再審制度の在り方について速やかに議論を始め、冤罪(えんざい)被害者を救う法改正に臨まなければならない。

 刑事裁判をやり直す再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正に向け、党首級を含む超党派の国会議員連盟が11日に発足する。

 冤罪を防ぐ手段として、捜査機関が独占する証拠の全面開示と、裁判所の再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)禁止-の2点を中心に議論を深める方針だ。

 同法改正を巡ってはこれまで、主に日本弁護士連合会が実現を訴え、県や政令市など160超の自治体が賛成の意見書を可決した。立法府での議連誕生は、議論が新たな段階に入ることを意味する。

 議連への参加呼びかけ人は26人で、自民党麻生太郎副総裁、公明党山口那津男立憲民主党泉健太日本維新の会馬場伸幸、国民民主党玉木雄一郎の各代表らが名を連ねた。議連代表には自民党柴山昌彦文部科学相が就くという。

 近年では、死刑確定の袴田事件静岡県)の再審が開始されたほか、懲役刑の服役後に再審無罪となった松橋(まつばせ)事件(熊本県)、無期懲役刑の確定後に再審無罪となった足利事件(栃木県)などが社会の強い関心を集めた。

 再審請求段階における証拠開示には現在、法的ルールがない。裁判官の裁量に委ねられており、開示に前向きな裁判官と、後ろ向きな裁判官による「再審格差」が生じていると指摘されている。通常の裁判と同じような具体的な規定を設けるべきだ。

 法務省検察庁は「刑事司法の安定性」を理由に、検察の抗告禁止などに強く反対している。

 確かに合理的根拠に乏しい再審請求をいたずらに認めれば、法の安定性は損なわれ、ひいては国民生活の安全にも影を落とすだろう。

 ただ、司法関係者が改めて確認すべきは「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則である。

 刑事訴訟法435条によると、再審請求は確定判決を受けた者の利益のためにあると定める。無罪とすべき新規で明白な証拠が示されれば、裁判所は再審決定を出す。

 問題は地裁で再審開始が決定しても、検察側は高裁、最高裁まで抗告できることだ。これが、再審無罪となるまでに長い年月を要することにつながっている。

 大崎事件(鹿児島県)では地裁と高裁で計3回も再審開始を決定しながら検察が不服を申し立て、最高裁などが覆した。肝要なのは、裁判所が1度でも再審開始を決めれば、直ちに本裁判に舞台を移すことだ。有罪か無罪かそこで決めればよい。

 日本の司法にとり重要な局面だ。「名ばかり議連」で終わらぬよう強く要望したい。