“再審制度のあり方 法改正含め検討” 超党派の議員連盟発足へ(2024年2月29日『NHKニュース』)

強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さんの再審=裁判のやり直しが決まるまで40年あまりかかるなど、審理の長期化が指摘される中、えん罪被害者の速やかな救済につなげようと、超党派の国会議員による議員連盟が発足し、法改正を含め、再審制度のあり方について検討を始めることになりました。

再審の制度は刑事訴訟法に規定がありますが、70年以上にわたって一度も改正されておらず、通常の刑事裁判とは違って審理の進め方などが具体的に定められていません。

このため再審請求の審理が長期化し、えん罪を晴らす妨げになっているとの指摘も出ています。
58年前に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんのケースでは、裁判のやり直しを求めてから去年、再審開始が決まるまでに40年あまりかかりました。
こうした中、再審に関する手続きを見直すことでえん罪被害者の速やかな救済につなげようと、超党派の国会議員による議員連盟が発足することになりました。
与野党の党首クラスが参加する見通しで、3月に設立総会を開き、法改正を含め再審制度のあり方について検討を始めることにしています。
再審の制度をめぐっては日弁連=日本弁護士連合会が法改正を求める意見書を公表しているほか、法務省有識者会議が証拠開示のあり方について議論しています。

再審制度をめぐる現状と課題

再審の手続きをめぐっては、審理に長い時間がかかり、えん罪被害者の早期の救済を妨げているとして、法律の見直しを求める声も出ています。
再審に関する規定は、100年前の1924年に施行された刑事訴訟法で定められました。
戦後、いまの刑事訴訟法が制定された際にほぼそのまま引き継がれ、その後は一度も改正されていません。

19の条文がありますが、通常の刑事裁判のように進め方や手続きの内容が細かく定められているわけではありません。
審理の進行は裁判官の裁量に委ねられていて、事件によっては再審をするかどうかを判断する「再審請求審」の段階で長い年月を要します。
死刑が確定したあと再審で無罪となった人は戦後4人いますが、いずれも申し立てから再審開始が決まるまでに20年以上かかっています。
去年、裁判所の判断が示されたケースでは、袴田巌さんは、最初の申し立てから再審開始が確定するまでに42年かかりました。
また、1984年に滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件では、最初の申し立てから20年以上たった去年2月に大阪高等裁判所が再審を認めましたが、検察が不服として最高裁判所に特別抗告し、審理が続いています。
この事件で無期懲役が確定した男性は無実を訴え続けていましたが服役中に75歳で死亡しました。

こうした状況を受け、日弁連=日本弁護士連合会は去年、法改正を求める意見書をまとめました。
手続きが長期化しないよう、通常の裁判と同じように「証拠の開示」に関する具体的な規定を設けることや、裁判所が再審を認めた場合には検察による不服の申し立て「抗告」を禁止すべきだと訴えています。
再審手続きでの証拠開示については、法務省有識者会議の中でも議論が始まっています。
一方、検察官による抗告が審理の長期化の要因になっているという指摘に対して小泉法務大臣は去年10月の記者会見で、「抗告権をなくすと違法・不当な再審開始の決定があった場合に是正する余地をなくしてしまうという問題が生じる。司法制度全体のあり方とも関連するので慎重に検討すべきだ」と述べています。

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