柏崎刈羽に燃料 再稼働へ国は情報発信を(2024年4月17日『産経新聞』-「主張」)

新潟県東京電力柏崎刈羽原発の6号機(右)と7号機

 

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所新潟県)7号機の原子炉にウラン燃料872体をセットする装荷作業が15日から始まった。
 同日、原子力規制委員会の承認が得られたことを受けての作業開始だ。再稼働に向けての第一歩である。手抜かりのない実施を期待する。
 3年前にも再稼働への道が開きかけたことがあった。だが、社員が他人のIDカードで原発の中央制御室に入っていたことが判明したり、テロ対策に必要な不正侵入検知用センサーの不備が明らかになったりするなど信頼性を揺るがす出来事が相次いだ。
 事態を重く見た規制委から令和3年4月、東電は事実上の運転禁止となる是正措置命令を受けていた。
東電では同発電所稲垣武之所長以下、全所員や協力企業のコミュニケーションの円滑化などの改善策に取り組んだ結果、規制委によって是正措置命令が解除され、原発事業者としての東電の「適格性」も認められた。昨年末のことだ。
 ようやく実現した燃料装荷には約2週間を要する見通しだ。その後、制御棒の機能確認など原子炉の健全性確認を行う。こうした東電側の技術的手順は確定しているが、見通せないのが新潟県の同意である。
 同原発が立地する柏崎市刈羽村は首長も議会も再稼働に同意済みだが、花角英世知事は判断を保留したままなのだ。
7号機の再稼働は地元の活性化だけでなく福島第1原子力発電所廃炉促進にもつながる。火力発電の燃料費低減で東電に年額1100億円の収益改善をもたらすからだ。
 花角氏には国家レベルでのエネルギー安全保障までを視野に入れての総合的な判断を求めたい。能登半島地震の道路寸断などで大事故時の避難について懸念しているようだが、原発の安全対策は新規制基準への対応で、福島事故前に比べて格段の厚みを増している。
 放射性セシウムなどによる周辺地域の放射能汚染を大幅に低減させるフィルター付きベントも完備しているではないか。政府は人々の不安解消につながる、こうした安心情報の発信に力を入れるべきである。
東電には7号機に続く6号機再稼働への準備を入念かつ遅滞なく進めるよう注文したい。