2024年4月期から日本テレビでは、「土ドラ9」枠が新設され、その第1回作品として、今田美桜主演の『花咲舞が黙ってない』が放送される。
杏主演の第1シリーズが放送されたのはちょうど10年前。ネット上で、前作と次作を単純に比較した、批判的不安コメントが散見されるのが、ちょっと気になる……。
イケメン研究をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、今田美桜主演の新シリーズに期待しかない理由を解説する。
理不尽を晴れやかに吹き飛ばせる存在
ダスティン・ホフマン主演の映画『トッツィー』(1982年)では、売れない(男性)俳優マイケルが、起死回生の策として、(女性)俳優になりすまして昼の帯ドラマで重要な役どころを得る。視聴者も現場スタッフもまさか男性だとは誰も思わない。
むしろウーマンリブ(女性解放)の象徴のように人気を博す。現場を仕切るベテラン・ディレクターはまるで女性をモノのように扱い、マイケルの扱いづらさを“男勝り”だと表現する。
今も昔もこの表現が不適切であることに変わりはない。マイケルは「(男勝りという表現に対して)そういう決めつけは許せないわ」と一蹴して、ディレクターをやり込めるのだが、こうした前時代的な理不尽を晴れやかに吹き飛ばせる存在を今の日本で考えたとき、不意に今田美桜の名前が浮かぶのは、筆者だけ?
今田版新シリーズに期待
2024年春ドラマの情報解禁ラッシュの中、日本テレビの新ドラマ枠「土ドラ9」で毎週土曜日よる9時から放送される『花咲舞が黙ってない』新シリーズ主演に今田美桜が決まった。同作といえば、池井戸潤の原作で、これまでに2度ドラマ化され、杏主演の第1シリーズ(2014年)は高視聴率を記録した。
ちょうど10年前のヒット作に対する令和版再ドラマ化発表にネット上では、なぜだか不安視する声が多数。“クールビューティ”の杏に対して今田の“カワイイ”じゃちょっと心配、みたいな意見の数々……。
いやでも、当時の杏の演技を見る限りでは、キャラクターの性格に合わせて顔を強張らせる表情は、クールとはニュアンスがちょっと違ったような。筆者は俄然、今田版新シリーズには期待しかないのだけれど。
“カワイイ”という形容が間違い
そもそも今田のことを単に“カワイイ”などと形容すること自体、間違い。そうした形容で彼女の豊かな才能を押し込めようとしているようにさえ思ってしまう。じゃあなんだ、そんなカワイイ今田が翻って、大胆不敵にでも振る舞えば、“男勝り”とでも褒めそやすの? (大臣の日常的な失言でもあるまいし……)そんなわけない。昨年放送の話題作『いちばんすきな花』(フジテレビ、2023年)の今田を見ただろうか。見た目ばかりで判断され、本来の自分じゃない自分を演じ、装い、押し込められてきたひとりの女性の心の叫びを体現していたじゃないか。
『花咲舞が黙ってない』のタイトル通り、当たり前のことを当たり前に正すためには、巨大な銀行組織のイチ行員であろうと、黙っちゃいない。そんな花咲舞というキャラクターほど、今田にぴったりな役柄はないと思う。
ドラマ界の“改革請負人”
あるいは、規格外の社員像をちゃきちゃきした演技で印象づけた『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ、2022年、以下、『悪女』)は、どうだったろう。組織内で硬直化する男性社員に対して、次々意識改革を促す様は、壮観の一言。
同作は1992年に石田ひかり主演で最初にドラマ化された作品。30年ぶりのリメイク作として、令和の時代に見事にアップデートした今田のアクチュアルな功績はもっと評価されてもいい。彼女は言わば、ドラマ界の“改革請負人”。
請け負ったからには、それを然るべきカタチにまで底上げする。より頑丈に抜かりなく、そして何より一生懸命に、丁寧に。昭和的など根性とは違った、爽やかな請負人姿がほんとうに似合う人だ。
筋の通ったキャスティング理由
『悪女』のリメイク請負を成功させたことで、同じ日本テレビ放送枠の『花咲舞が黙ってない』を任される。こんなに筋の通ったキャスティング理由はない。前作の俳優と表層的な比較をして、ケチをつけるなんて、ちょっとね。 高圧的にバリバリ改革するんじゃなく、根気強く周りに働きかけながら、内側から生まれ変わらせる。そのためにはバシバシ発言することに妥協はない。物言う株主以上に強烈な姿勢だ。今田の再演なら、どんだけ正直にズバリ物言う行員になってしまうのか。むしろそっちのほうが心配なくらい。
3365人の中から2025年前期のNHK朝ドラ『あんぱん』の主演に満場一致で選ばれたばかりでもある。今田美桜の時代が、確実にきてる。古い価値観や制度をドラマ内キャラクターの姿を借りて、どんどん是正し、一蹴してほしいと思う。
<文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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