今や毎クールのように放送される漫画を原作としたドラマ作品。昨年の秋ドラマでは20作品以上が漫画を原作とした作品だった。
“ブーム”ともいえる状況だが、最近はその制作プロセスにおける課題も注目を集めている。
今年1月には、昨年10月期に放送されたドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)の原作者である芦原妃名子さん(享年50)が、ドラマ化時のトラブルをXで明かした後に急逝する痛ましい事件が発生した。 この事件の影響で日本テレビは2月23日、社内特別調査チームによる調査を開始。『セクシー田中さん』の件ではドラマ制作に関する約束事を契約書で取り交わしていなかったことが明らかになっており、テレビ業界の構造的な問題を指摘する声も上がっている。
もちろん制作における問題点は改善されていくべきだが、これまで放送されてきた漫画原作のドラマには人気の高い作品も多く、漫画を原作としたドラマ作品が“悪”というわけでは決してない。そ
こで本誌は、20代以上の男女500人を対象に、過去10年以内に放送された漫画原作ドラマで面白かったと感じた作品を聞いた。 まず第3位に選ばれたのは『セクシー田中さん』。
『姉系プチコミック』(小学館)で連載されていた同名漫画を原作にした同作は、木南晴夏(38)演じるアラフォーの会社員・田中京子が主人公。昼は地味で目立たない会社員として働いている田中だが、夜はSaliと名乗ってベリーダンサーとして活動している。
同作では田中の生き方に惹かれる20代の派遣社員・倉橋朱里(生見愛瑠)など、それぞれのキャラクターが成長していく姿が描かれている。
そんな同作について《これまでにはない感じの内容にひかれた ドラマ化されて、すごい奇抜な衣装も含めて演じた女優さんにもひかれた》《ストーリーも出ている俳優さんも良かった》とストーリーだけでなく木南を筆頭に、生見や安田顕(50)、毎熊克哉(36)といった俳優陣を賞賛する声が。
また《田中さんの生き様が素晴らしいと思った》という声も寄せられた。 主演の木南は《田中さんはまっすぐで、人のいいところを見つめる視点や、陰口を言われても、自分なりにきれいに受け流していくところも素敵なんです》(「美的.com」’23.10.22)と自身の役柄を讃えている。
原作者の芦原さんは、ドラマの脚本について細かく出し戻したことを明らかにしており、作品の魅力は視聴者にもしっかりと伝わったようだ。
続いて第2位は、’12年から放送されている『孤独のグルメ』シリーズ(テレビ東京系)。漫画版の原作は久住昌之氏が、作画は谷口ジロー氏が務めており、もともとは『月刊PANJA』や『SPA!』(ともに扶桑社)で掲載されていた。
松重豊(61)演じる主人公の井之頭五郎は、輸入雑貨の貿易商を営んでいる。五郎は庶民的なお店で食事することを生き甲斐としており、同作では五郎が“ひとり飯”を楽しむ様子にスポットライトを当てている。
原作漫画では五郎が訪れた店の名前は明かされていないが、ドラマ版では実在する飲食店が登場。また原作版の五郎は寡黙なイメージだが、松重演じる五郎はどこかコミカルだ。そういった点もドラマ版独自のテイストとなっている。
『孤独のグルメ』に対しては、《とても庶民的な店舗の紹介が新鮮》《毎回出てくる料理が楽しみです》《一人で好きな食べ物をたくさん食べる内容がシンプルなのに共感できて面白い》といった声が寄せられており、やはり食事シーンを気に入っている人たちが多い様子。
また《主演の松重豊が食事している時の心の叫びやつぶやきが面白い》《俳優の松重豊がとても上手な役をしてるから》と主演である松重も同作が愛される要因となっているようだ。 ‘20年10月、『7.2 新しい別の窓』(ABEMA)で松重は同作に起用された当初を回想し、「ただ、俺が1人で食っているだけで、誰が観るの? どこが面白いの? お客さんが楽しめるはずないって思って。
何年か経って、お前こんな番組やってたねって笑い話になると思っていた」と明かしている。しかし、『孤独のグルメ』は現在Season10まで制作されており、松重の予想が裏切られるほどの人気ドラマとなった。
そして、1位に選ばれたのは’16年10月より放送された『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)だ。原作は『Kiss』(講談社)で’20年4月まで掲載されていた、海野つなみ氏による同名漫画。ストーリーは新垣結衣(35)演じる森山みくりが専業主婦に“就職”することを思いつき、星野源(43)演じる“35年間恋愛経験なし”という津崎平匡のもとに嫁ぐことに。契約結婚をすることになった2人だが、次第に惹かれ合うようになるというラブコメ作品だ。
そんな同作には《丁寧に作られていて、セリフも印象的で、キャストも役に合っていて、ストーリーにもキュンキュンしたし共感するところもあったから》《いろいろと勇気がもらえた》《漫画を読んだことがなくてもわかりやすくて面白かったから》とストーリー展開に魅力を感じた人たちからの声が続々と寄せられることに。また《主人公を演じた新垣結衣さんと独身サラリーマン役の星野源さんがはまり役でした》とキャスティングを気に入った人からの声も上がっていた。
原作にはないオリジナルエピソードも含まれていたドラマ版。漫画の実写化では、しばしばオリジナルエピソードが”余計”だと酷評されることがあるが、『逃げ恥』の場合は原作ファンもそれらを大絶賛。脚本を務めた野木亜紀子氏は、原作のある作品をドラマ化する際に気を付けていることについて、’17年『文春オンラインの』インタビューで《結局、重要なのはパーツではなく、作品の哲学を曲げないようにすることなんじゃないかと》と語っていた。まさにこの理念が生かされたのだろう。