育児・介護休業法 キャリアの継続を確実に(2024年3月6日『産経新聞』-「主張」)

公園で遊ぶ保育園児

 少子高齢化が急速に進む中、政府は仕事と育児・介護の両立に向けた取り組みを強化する方針だ。今国会に育児・介護休業法などの改正案を提出する。

 これを確実に成立させ、より柔軟な働き方が可能になるようにすべきだ。

 仕事でキャリアの形成を望む人が、それをあきらめなければ子育てや介護が困難になる状況を是正する必要がある。結婚や出産を望む若者は減り、少子化に歯止めがかかっていない。仕事と両立できるように支援し、出生率の向上につなげたい。

 改正案では育児との両立に関し、3歳未満の子供がいる従業員に認めている残業の免除を、就学前の子供がいる従業員に拡大する。

 子供の発熱時などに利用できる休暇制度の対象を、就学前の子供から小学校3年生の子供にまで拡大することも盛り込んだ。病気やけがに限らず、卒園式や入学式などにも利用できるようにする。親が子供の成長過程の節目にしっかり寄り添うことは重要である。

 女性に偏っている育児や家事の負担も軽減したい。厚生労働省などによると、6歳未満の子供を育てる共働き世帯では、令和3年に男性が育児や家事に使った時間は1日あたり平均約2時間なのに対し、女性では約6時間半だった。

 男女がともに育児に携われるよう、政府は男性の育児休業取得率を7年までに50%にする目標を掲げている。現在は1千人超の従業員がいる企業に義務付けている男性の育休取得率の公表を、300人超の企業に拡大する。この推進にあたっては、質の伴う育休にすることが欠かせない。

 介護離職への取り組みも待ったなしである。改正案では、従業員から家族の介護をしていることが伝えられた事業主に対し、介護休業制度などの両立支援策を従業員に知らせ、利用の意向を確認することを義務付けている。


 人手不足に悩む中小・零細企業の中には、休暇の取得促進に慎重な向きもある。両立支援策に実効性を持たせるには、職場での理解の醸成が不可欠だ。だれがどの業務を受け持ち、どの程度の進捗(しんちょく)状況なのかを、普段から従業員の間で共有するなど、作業に遅れが出ないようにする工夫も求められよう。