岩手県立大(岩手県滝沢市)の理事長の月額報酬が30万円以上増額され、賛否があることを報じた河北新報の記事に県立大が訂正を要求したことが5日、県議会2月定例会予算特別委員会で取り上げられた。飯沢匡県議(いわて県民クラブ・無所属の会)は「メディアへの異常な介入。教育機関としての資格が問われる」と疑問を呈した。
■理事長報酬の引き上げを報じる
県立大は、副知事を退任した千葉茂樹氏が2020年4月に理事長に就任することに伴い、月額報酬を62万6000円から上限99万7000円に引き上げた。河北新報は23年10月8日の朝刊で、報酬の増額を巡り「経歴を踏まえた妥当な額」「身内の天下りに対する厚遇」などと賛否が分かれている状況を報道した。 報道に対し、県立大は23年10~11月、3回にわたり「否定的な意見への誘導だ」といった見解を示し、取材の有無などを問う質問書を河北新報社に送付。河北新報社は回答したが、県立大は今年1月12日、「明確な回答が示されなかった」として訂正記事を要求したことを伝える文書を、県政記者クラブ加盟の報道各社に配布した。
飯沢氏は「自分たちを正当化するためだけに固執する大学機関でいいのか。教育機関がこういうことをして意味があるのか」と批判。「大学のマネジメントに関わる問題。学生にも非常に影響が出る」と指摘した。
千葉氏については「(記事の)中身が意に沿わないことに質問状を送り付けるということは(法人を代表する)職務の内容にも疑義が生じる」と語った。 大学を設置する県の千葉幸也総務部長は「県立大が記事に関する疑義の照会、見解を伝えたと推察する。河北新報社は取材をした結果の記事で、それぞれの立場に立って行動したものと思っている」と述べるにとどめた。
臼沢勉県議(自民党)は、県が県立大に交付金を支出していることを踏まえ「報酬増額を巡り、県からの働きかけや関与はなかったのか」と質問。千葉総務部長は「承知していない」と答えた。
■県立大が県政記者クラブ加盟各社に文書配布
県議会で「メディアへの異常な介入」と指摘を受けた岩手県立大。1月12日に報道各社に配った文書は「全ての質問に明確な回答が示されなかったことから、書面により訂正記事の掲載等を要求したことについて、お知らせします」と記したが、昨年10月8日の理事長報酬を巡る記事に誤りはなく、河北新報社は質問に回答している。
一例として、県立大は「なぜ当事者である岩手県立大の取材をしないまま記事にしたのか」と質問。河北新報社は「掲載直前の10月5日を含め2回、(県立大)総務室に取材している」と書面で答えた。 しかし、県立大は報道各社に示した文書に「記者から公式コメントを求められるような正式な取材は受けていない」と記した。
千葉茂樹理事長の代理人弁護士も今年2月27日付で河北新報社に文書を送った。 文書は、県議会の質問や答弁は県立大理事長の職名でやりとりされ、実名は1回も出ていないとし「なぜ、通知人(千葉氏)の特定の個人を識別することができる『氏名』をことさら掲載されたのか、その理由を明らかにされたい」と要求した。