宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区では日曜と祝日に「ゆりあげ…(2024年3月23日『東京新聞』-「筆洗」)

 宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区では日曜と祝日に「ゆりあげ港朝市」が開かれる。漁港近くで魚や野菜などが売られ、40年を超す歴史があるが、13年前の東日本大震災で一帯は津波に襲われた

▼うちひしがれる人々の役に立とうと、数キロ内陸にあるショッピングセンター駐車場を借り朝市を再開したのは震災の約2週間後。家族を亡くした人も販売に加わった

▼買い物客から「ありがとう」と握手攻めにあい、ポロポロ泣けてきたと朝市協同組合理事長の桜井広行(こういち)さんは振り返る。間借りの駐車場で日曜開催を続け、閖上の元の場所に朝市が戻ったのは震災2年後である

能登半島地震で大規模火災が起きた石川県輪島市で千年を超す歴史を誇る朝市。店主らは今日、金沢市で出張朝市を震災後初めて開く。店のおばちゃんたちの「こうてくだー(買ってって)」という声が久々に聞けそうだ

▼今後も県内外に出張し、輪島の街が蘇(よみがえ)って市を再開できる日を待つ。昨日、輪島の焼け跡を訪れた天皇、皇后両陛下に坂口茂市長が出張朝市のことを伝えると皇后さまが「一日も早く戻ってきて復興できるようになれば」と期待を示されたという。多くの人が共有する思いであろう

閖上に朝市が復活した日は約1万5千人でにぎわったと地元紙の河北新報が伝えていた。写真の買い物客は本当にうれしそうに笑っていた。輪島でも、いつか見られる。