震災13年・被災地の人口減少/新たな仕組みで課題克服を(2024年3月7日『福島民友新聞』-「社説」)

 東日本大震災東京電力福島第1原発事故に伴い避難指示が出るなどした市町村は、地域の再建を図るとともに、人口減少を乗り越えられるかが問われる。

 避難市町村の多くは、居住者がいない状況から地域を再建している。住民の帰還と併せて移住施策を推進しているものの、移住希望者を奪い合う全国の自治体間の競争は激しさを増している。避難指示が解除された地域の居住人口を回復するのは簡単ではない。

 20、30年後、現在と比べて人口が半減する自治体が県内に多数出てくると推計されている。避難市町村も将来、回復していない人口がさらに減少する公算が大きい。各市町村は、少ない人口で行政サービスや社会インフラなどを維持する観点を地域再建の議論や施策などに取り入れる必要がある。

 避難市町村は深刻な人手不足に直面している。例えば、居住者が少ないために民間の介護サービス事業が成り立たない地域がある。自治体が民間の役割を補おうとしても、人手が足りない。

 対応策として避難市町村の広域連携が考えられるが、現時点で介護分野での自治体間の連携は進んでいない。これが高齢者の帰還を阻む要因の一つとなっている。

 民間の政策提言組織「令和国民会議(令和臨調)」は人口減少に適応するために、人口増加を前提とした社会の仕組みをつくり変える必要性を指摘している。その方向性として、自治体や企業などの枠を超えた連携を挙げている。

 限られた人手で効率を最大限高めるには、同じ課題を抱える自治体同士、さらには官民の連携が欠かせない。国と県、市町村は、一人でも多くの住民の帰還と移住を促進できるよう、人手不足を克服する仕組みづくりが急務だ。

 国立社会保障・人口問題研究所は、日本の人口に占める外国人の割合について、現在の2%から、50年後には10%に上昇すると推計している。外国人の受け入れ環境の整備は避けて通れない課題だ。

 そうした中、浪江町に福島国際研究教育機構(エフレイ)が設置された。海外の研究者やその家族の定住が期待されており、浪江町は町民向けの英会話教室を開いたり、双葉町は新設する学校の基本構想案に国際的な教育環境の整備方針を盛り込んだりしている。

 外国人を受け入れる狙いは人手不足の解消などにとどまらず、日本人にない多様な視点を取り入れることで古い仕組みの変革を促すことにある。外国人らも暮らしやすい地域をつくり、避難市町村の国際化を進めることが重要だ。