生活保護申請 去年は25万件超と最多 この10年余りで(2024年3月6日『NHKニュース』)

去年1年間の生活保護の申請件数は前の年より7.6%増えて25万件を超え、この10年余りで最も多くなったことがわかりました。厚生労働省は「新型コロナの影響が長期化したことや、物価高騰などで貯蓄が減少していることが影響していると考えられる」としています。

70代男性 コロナ禍で仕事減少 物価高騰で生活保護受給

コロナ禍をきっかけに仕事が減り、その後も回復しない状態が続いたことから、生活保護の受給を始めた男性がいます。

大阪府内で1人で暮らす70代の男性は、フリーランスのライターとして40年近くにわたって雑誌の企画や取材などの仕事を請け負い、年300万円ほどの収入で生計を立てていました。

しかし、コロナ禍をきっかけに2020年ごろから仕事の発注が大幅に減って年収は100万円を切り、いまも仕事が回復しない状態が続いているということです。

月3万円ほどの年金とコロナ禍に国が行った事業者向けの給付金や生活費の貸し付けなどでやりくりしていましたが、こうした支援が去年までに終了したことに加え、物価高騰の影響で食費や光熱費などの支出が増え生活を維持できなくなったといいます。

このため、男性は去年5月、地元の社会福祉協議会に相談し、生活保護の受給を始めました。

「年40万円ほどの年金だけでは食べていけない」 

男性は「コロナがなくて取引先の状況が変わらなかったら仕事を頑張れたのかもしれませんが、年齢もあるので、新たな取引先を開拓する意欲があっても結局、実を結びませんでした。年40万円ほどの年金だけでは食べていけないですし、家賃も払えずここでも暮らせません」と話していました。

去年の生活保護申請件数25万5079件 11年間で最多

厚生労働省によりますと、去年1年間に全国で生活保護が申請された件数は、速報値で25万5079件と、前の年と比べて1万8123件、率にして7.6%増えました。

生活保護の申請件数は、現在の方法で集計を始め、比較が可能な2013年以降、6年連続で減少していましたが、新型コロナが感染拡大した2020年から4年連続で増加していて、この11年間で最も多くなりました。

前の年からの増加率も、全体が増加に転じて以降、この4年間で最も高くなりました。

去年12月の時点で生活保護を受給している世帯は全国で165万3778世帯と、前の年の同じ月と比べておよそ7092世帯、率にして0.4%増加しています。

特に単身の高齢者世帯が多く、84万1307世帯と、全体の51.1%を占めています。

支援団体 “コロナ禍で借りた多重債務の相談目立つ”

生活保護の受給申請が増え続けている背景について、受給者などの支援を続ける団体はコロナ禍の長期化の影響や物価高による影響を挙げています。

大阪の豊中市社会福祉協議会ではコロナ禍の当時、生活が苦しくなって相談してきた人から、生活再建がどこまで進んだかを継続して聞き取りながら就労などの支援を行い、必要な人には生活保護につなげています。

最近、目立つのは、5類移行後も不定期の仕事しか見つからないという人やコロナ禍の最中に借りた多重債務に苦しむ人、それに物価の高騰で食費や光熱費などが生活を圧迫して家賃が払えないといった相談だということです。

社会福祉協議会「生活改善できるようフォロー続ける」

豊中市社会福祉協議会の事務局長で、厚生労働省の審議会の委員を務める勝部麗子さんは「コロナでつまずいた人やそのときは何とか頑張れた人たちも、物価高の影響で今度は食費とかが足りなくなったりして、だんだん生活に苦しむ人たちが増えているというふうに感じる。自分たちの生活が立ち行かくなったら、いったん生活保護を受けて立て直しをしていくこともできますし、就労支援を含めて少しでも生活改善できるようフォローを続けていきたい」と話していました。

厚生労働省「生活に困っている人は自治体窓口に相談を」

厚生労働省は「新型コロナの影響が長期化したことや、物価高騰などで貯蓄が減少していることが影響していると考えられる。生活に困っている人はためらわずに、自治体の窓口に相談してほしい」としています。