文科相の不信任否決 これで免責とはならない(2024年2月21日『福井新聞』-「論説」)

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との「密接な関係」が明らかになったとして、立憲民主党が提出した盛山正仁文部科学相不信任決議案が自民、公明両党などの反対多数で否決された。ただ、そうであっても、今後の説明責任が免除されたわけではないことを盛山氏は肝に銘じるべきだろう。国会議員としての適性には疑問が残ったままであり、真摯(しんし)な反省と対応が求められよう。

 岸田文雄首相は昨年9月に盛山氏を、宗教行政を所管する文科相に起用したものの、2021年の衆院選の際、教団の関連団体から推薦状をもらい、選挙支援を受けていた問題が浮上。教団との事実上の政策協定とされる推薦確認書に署名していたとも報じられた。国会質疑で盛山氏は推薦状の受領を認めたが、選挙支援については「私の方から依頼した事実はない」と曖昧な答弁に終始。推薦確認書への署名に関しては「記憶がない」との答弁を繰り返してきた。

 22年9月に公表された自民党の自己申告形式の調査で、盛山氏は「関連団体の会合に出席、あいさつ」しただけとしていた。これでは、虚偽申告していたと疑われても仕方なく、不信任案が指摘したように説明責任を果たしていないのは明らかだろう。教団を追及する立場の人物が、過去に相手側に世話になっていたとしたら「任にあらず」と言いたくなるのも当然だ。

 首相は、盛山氏が文科相就任後、教団の解散命令を請求したことを踏まえ「過去に接点があったとしても今は完全に関係が断たれている」と擁護。盛山氏はこれをいいことに「これまで何ら恥ずべき行動は取ってこなかった」などと開き直りとも言える発言をしている。首相は新たに問題視された過去の接点を事前に把握していれば、文科相に起用しなかったはずだ。

 盛山氏の続投方針を堅持していたのは、首相自らの任命責任に跳ね返ってくるのを警戒したためだろう。裏金事件で内閣支持率がじり貧になる中、政権基盤をこれ以上揺るがす事態は避けたいとの思惑もあったことは否定できまい。国民の不信感を払拭するよりも、内向きの論理を優先しているとしか思えない。

 22日には、地裁が教団と文科省の双方から意見を聴く「審問」が初めて開かれる。同省の主張・立証を巡って盛山氏が何らかの判断をするたびに、疑いの目が向けられることにならないか。不信任案は「国民から疑念を抱かずに公正な審理を進めることは不可能であると断ぜざるを得ない」と糾弾した。首相や盛山氏がこれを否定するのであれば、教団との関係について調査を尽くし、つまびらかにすべきだろう。