中古車販売大手「ビッグモーター」店舗前の街路樹が枯れるなどした問題で、警視庁は4日、器物損壊容疑で、同社の兼重宏一・前副社長(35)や東京都内4店舗の店長ら計13人を書類送検した。一連の問題で、前副社長が立件されたのは初めて。前副社長は、創業者兼重宏行(かねしげ・ひろゆき)前社長(72)の長男。
書類送検容疑では、2023年7月3~4日、前副社長と多摩店(多摩市)の当時の店長や従業員ら計6人は店舗前の街路樹20本を伐採。21~23年、環八世田谷店(世田谷区)、練馬店(練馬区)、立川店(立川市)の当時の店長ら7人は各店舗前で除草剤をまき街路樹を枯らしたとされる。
捜査関係者によると、同社では幹部が店舗や周辺の清掃の状況などを確認する「環境整備点検」を実施。多摩店では23年4月の点検では「不適」だったが、街路樹伐採後の同年7月の点検では「適」となった。
◆「相当処分」の意見付き
前副社長は任意の聴取に「伐採の指示はしていない」と説明したが、警視庁は、前副社長が両点検に立ち会っており、伐採に関与した疑いがあると判断。前副社長について、検察官に刑事処分の判断を委ねる「相当処分」の意見を付けた。
ビッグモーターの担当者は取材に「前副社長は既に退職済みでコメントする立場にない。警察には全面的に協力する」と回答した。
一連の問題を巡っては、都からの被害届を受理した警視庁が昨年9月に本社や都内店舗を、12月には前副社長の自宅などを家宅捜索した。神奈川県警は今年1月、川崎市内の店舗前の街路樹伐採を指示したとして、器物損壊容疑で50代の同社元役員を逮捕した。
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◆異常に厳しくなった「環境整備点検」
男性によると、定期的に行われてきた環境整備点検は「お客さまに細かいところまで気配りができるように」という考えから始まったという。
しかし、兼重氏が副社長に就任した5年ほど前から、点検は「あり得ないほどの細かさ」になった。「机上のボールペンは1本のみ」「雑草、落ち葉は一切許さない」など、落ち度を見つけるのが目的のようになった。「副社長や取り巻きの幹部の意向だろう」と感じていたという。
点検の評価は、降格や減給につながった。男性は真夏でも、アスファルトの隙間から生えてきた雑草をピンセットで抜くほど神経をとがらせていた。
自身は一度も伐採しなかったというが、問題が世間から注目されるようになってから気づいた。「草木が原因で立場を失うなら、木を切って構わないという思考になっていた。当時の僕ら店舗側の感覚はまひしていた」