初めて振り袖を着て笑顔を見せる高井さん㊥=いずれも川崎市で(竹谷直子撮影)
◆コロナ禍きっかけに活動
「すてき、黒にしてよかった」。黒地に赤や白などの鮮やかな花があしらわれた振り袖を羽織った会社役員の高井美憂さん(21)=麻生区=が笑った。
2月上旬、市内で開かれた着付けの会。2023年の成人式に仕事の都合で参加できなかった高井さんは、仕事を優先したことには納得する一方、式に出席した友人らの晴れ姿をうらやましいと感じていた。「成人式は人生の中で重要なものなんだと思った。きっかけがなかなかないので、振り袖を着たことで、大人になったんだなと感じられた」と喜んだ。
高井さんの母親の野沢理恵さん(58)=高津区=は「振り袖を着てもらいたかったから、かなってうれしい」と目を細めた。ヘアメークを担当したヘアアレンジメントサロン「ボガスティーズ」の鈴木詩織さん(34)=高津区=は「初参加だったが、こういうボランティアは素晴らしい。喜んでもらえてよかった」と笑顔だった。
川崎むすびの会は22年3月、コロナ禍で成人式に参加できなかった知人の女性に、無料で振り袖を着付けたことをきっかけに活動を始めた。市の助成なども活用している。希望者は交流サイト(SNS)などで募り、申し込みがあるごとに開催。着付け講師の大林さんが、生徒やプロのカメラマンの知人などに協力してもらい、これまで4人に振り袖を着付けてきた。
◆着物や髪飾りも選べる
着物や髪飾りは、大林さんや生徒らのものから選んでもらえるようにし、当日は着付けとヘアメーク、撮影までを無料で行う。
大林さん自身も、振り袖を購入したが、成人式当日に仕事で着られなかった。コロナ禍では、開催予定直前に式が中止された自治体もあった。「20歳の人たちにとって成人式のための準備は大変なこと。式がなくなったり、金銭面で諦めたりしていた人が喜んでくれて、『ありがとう』と言ってもらえるのは本当にうれしい」
染めや織りなどの高い技術が詰まった振り袖には独特の優美さがある。「緊張していたお嬢さんも羽織ると笑顔になり、こちらも幸せのお裾分けをもらえる」。今後も応募があれば、開催していきたいという。
問い合わせは、ホームページへ。企業の協力や振り袖などの寄付も募っている。
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