立憲民主党の辻元清美代表代行は4日の参院予算委員会で、自民党派閥のパーティー収入不記載事件について岸田文雄首相(党総裁)の道義的責任を問いただした。「政治とカネ」を巡っては辻元氏は前科がある。辻元氏は衆院予算委員会に参考人招致された経験を引き合いに「震えながら出たんです。逃げなかった」と述べ、自民若手議員に対して政治倫理審査会に出席し真相の告白を促すなど「ブーメラン」の直撃回避を図った。
【写真】立憲民主・辻元清美氏「4月にイチかバチかの裏金解散か」
◆首相の解散戦略を推察
「4月の衆院3補欠選挙に合わせて衆院解散のフリーハンドを持ちたい。そのため予算案の自然成立の期限である土曜日の採決を強行した。補選に負けたら、総裁選再選が危うくなる。一か八かの裏金解散、考えているのではないか」 辻元氏は冒頭、2日に衆院を通過した予算案審議が異例の「土曜国会」を経た背景について、首相の思惑をこう解説してみせた。
首相は「全く考えていない」とかわした。 辻元氏は80分近い質疑時間の大半を「政治とカネ」を巡る疑惑追及に充てた。
「自民党の『裏金議員』は何人に1人か。4.4人に1人だ。大臣席に20人。この中に5人いるということだ」と挑発し、安倍派(清和政策研究会)の若手を気づかう余裕も見せた。
同派パーティー券の販売ノルマ超過分の資金還流を巡っては、令和4年4月に会長だった安倍晋三元首相が中止を指示した経緯がある。
一方、安倍氏が死去し、資金還流が再開された経緯については不透明なままだ。1日の衆院政倫審で塩谷立元文部科学相と西村康稔前経済産業相ら同派幹部の発言は食い違っている。
辻元氏は「政倫審に出た〝裏金幹部〟は『自分に責任はない』といっている。何人もの(自民若手)議員が『復活させたのは幹部に責任がある』といっている。若手がかわいそうだ。若手こそ政倫審で証言しないと実態解明ができない」と述べた。
さらに、「塩谷さん、西村さん2人を呼んで『どっちなんだ』と確認したらどうか。電話かけるか、官邸に呼んで聞けばいいだけの話だ。火の玉になってやるのではないか」と指導力発揮を求めたが、首相は「党として対応を考える」とつれない。
◆「ブーメラン」回避か
辻元氏を巡っては、平成14年に勤務実態のない政策秘書を採用、国から支給される秘書給与のうち5万円を政策秘書に支払い、残りを流用するという事件が発覚し、議員辞職し、詐欺容疑で逮捕された経緯がある。辻元氏の登壇を巡っては「ブーメラン」(自民党関係者)と揶揄する向きもあったが、辻元氏は衆院予算委員会に参考人として臨んだ経験も盛り込みながら、首相に迫っていく。
「私を引きずりだしたのは自民党なんですよ。震えながら出たんです。逃げなかったから(国会議員として)復帰できた」
こう述べた上で、「自民党若手議員に安倍派幹部の顔色を見ず真実を語れと呼び掛けてください」と若手議員の政倫審に出席を再三求めた。
辻元氏は与党が協議する「防衛装備移転三原則」の見直しについても矛先を向ける。
「殺傷能力のある武器は海外に輸出しないとなっていた。人を殺す武器も日本は売る国にしたいのか」「武器の輸出国にならないというのは国是のようなものだ。自公の密室で話せばいいことではない」
首相も返す刀で、こう「ブーメラン」を指摘する。
「民主党政権時代に殺傷兵器も含めて当時の武器輸出三原則の例外的措置として講じてもらい、殺傷兵器を含めた第三国移転も容認された」
質問を終えた辻元氏は記者団に不記載事件を巡る自民党の対応が後手に回っているとの見方を示し、「ひょっとしたら誰も首相のいうことを聞かなくなって独りぼっちになっているのではないか」と同情してみせた。(奥原慎平)