「ファーストレディー」とは米国なら大統領夫人をいうが、19…(2024年3月4日『東京新聞』-「筆洗」)

 「ファーストレディー」とは米国なら大統領夫人をいうが、1930年代のある野球チームにも「ファーストレディー」と呼ばれた女性がいた

▼「ニューヨーク・ヤンキースファーストレディー」。名選手ルー・ゲーリッグの妻エレノア・ゲーリッグさんのことを指す。ゲーリー・クーパー主演の『打撃王』を思い出す人もいるか

ファーストレディーの呼び名はゲーリッグが一塁手だったことを掛けたシャレだろうが、現役時代はもちろん、難病筋萎縮性側索硬化症)と闘うゲーリッグを懸命に支えた姿が、その「称号」にふさわしかったのだろう。「この世で一番幸せな男」。有名な引退スピーチで、ゲーリッグは妻を「tower of strength」(力の塔=困難なときに頼れる人)と呼んだ

エレノア夫人(左)とゲーリッグ(右)。ゲーリッグの写真にはこのように紳士的な笑みを浮かべた姿が多く、穏やかな人柄がうかがえる。(C)Getty Images

 

ドジャース大谷翔平選手が結婚を発表した。うろたえる女性ファンも多いと聞くが、お互いに支え合う「力の塔」を見つけた二刀流の今後に期待する

▼別の結婚の話題になるが、こっちの方は笑えない。昨年の婚姻数(速報値)。90年ぶりに50万組を割り込んだそうだ。2022年に微増したが、つかの間のことだったか。婚姻数は今後の出生数に直結する。かくて少子化はまた加速する

▼結婚が幸福に直結するとは思わない。結婚を選ばぬ経済的な事情や時代の変化もあるのは分かっていても婚姻数減に「大谷効果」をつい期待したくなる。