小泉今日子さんが語る本の魅力 「心の中の森がどんどん豊かになるんです」<会いたい 聞きたい>(2024年3月3日『北海道新聞』)

本好きとして知られる小泉今日子さん=インタビュー写真はすべて金田翔撮影

本好きとして知られる小泉今日子さん=インタビュー写真はすべて金田翔撮影

 こいずみ・きょうこ 神奈川県生まれ。1982年に「私の16才」で歌手デビュー。以降、歌手・俳優として舞台や映画、テレビなどで幅広く活躍する。2015年から「株式会社明後日」の代表を務め、プロデューサーとして舞台制作も手がける。文章力に定評があり、第33回講談社エッセイ賞を受賞した「黄色いマンション 黒い猫」(スイッチ・パブリッシング)、「小泉今日子書評集」(中央公論新社)など著書多数。
 ――本にまつわるポッドキャスト番組を始めたいきさつを教えてください。
 「ポッドキャストの番組をやってみないかと、音楽配信大手スポティファイから打診されたのが、ちょうどコロナ禍のさなか。私も活動が制限される状況でしたし、多くの人が自分の時間を見つめ直した時期だったように思います。今まで当たり前のように繰り返していた日常の行動から解放された人も多かったのでは。私は本が好きですので、これを機に本を読む習慣が戻ってきた人がいるだろうと思ったこともあり、番組では本をテーマにしたいと考えました。それに最近は独立系の本屋さんが増えているような気がしていて、そこにはどんな面白い理由があるんだろうと気になっていました。そこで番組の1回目は東京の独立系書店の先駆けである中目黒の『COW BOOKS』の創設者・松浦弥太郎さんのもとを訪れたのです」
 「ホントのコイズミさん」 小泉今日子さんが本に関わる人たちと語らいながら、新たな扉を開くヒントになる言葉を探していくポッドキャスト番組。「ホント」は「本当」と「本と」をかけた。2021年4月から2023年9月まで120回放送された。書店の代表や作家、俳優、翻訳家など幅広いゲスト75人が登場し、22の書店を訪問した。番組は終了したが、120回すべてを聞くことができる(https://open.spotify.com/show/1DwTm7vb6AFLcKQuSCLWuB
コロナ禍で家で過ごす時間が増えた時期にポッドキャストの番組を始めた

コロナ禍で家で過ごす時間が増えた時期にポッドキャストの番組を始めた

 ――番組では作家の吉本ばななさん、川上未映子さん、歌人穂村弘さん(札幌市出身)ら多くの文学者が登場しました。さらに演出家、俳優と本当に幅広いゲストが参加しています。人選はどうしていたのですか。
 「私だけでなく番組プロデューサーやディレクターら、一緒に番組をつくる仲間たちと、みんなで情報交換をしながら決めました。文学者というのは、私たちにとってスペシャルなゲスト。穂村さんも『ちょっと恐れ多い存在だけど、そろそろお願いしてみようか』という感覚で。作家や歌人の方は言葉をつむぐ仕事をしているからか、ちょっとした表現にも感動することが多かったです。私が大好きな小説『ピエタ』の作者、大島真寿美さんも番組に参加してくださったのですが、気が合って、番組ではお互いがゲラゲラと笑いながら会話が進んだ。これが縁で交流が深まり、『ピエタ』の舞台化につながった。その後もご縁は続き、今後の企画を考えているところです」
番組での出会いが舞台化などのさまざまな広がりをもたらした

番組での出会いが舞台化などのさまざまな広がりをもたらした