人生100年時代、現役世代を駆け抜けた後はどのように過ごせばいいのでしょうか。精神科医の保坂隆先生いわく、人生後期は無理をせず「ほどほど」をキーワードに過ごすことが大切とのこと。
『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』より、日常生活を元気で楽しく暮らすための知識をご紹介します。
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◆パートナーへの期待の持ち方
「引き算と足し算」で老いを楽しむ故・斎藤茂太さんはたくさんの人生論を書いておられますが、「四〇%の妻」というエッセイはなかなか面白いものです。 妻を含めて他人は自分とは別人格なのだから、こちらの思いの半分もかなっていれば「それで大満足すべきだ」と言い、さらに年齢とともに、すべての願望レベルを下げていき、願ったことの8割がかなえば、これまた満足すべしとも主張しています。
一緒に年を重ねてきた妻に対する願いも50 %×0.8=40%かなえば大満足しましょうというわけですから、「四〇%の妻」であれば立派に合格ということです。 たしかに、お互いがそう思っていれば、その夫婦は合格点が取れ、この先もうまくやっていけるでしょう。
◆「もう年だから」と言わずに
私もこれまで「老いに向かう年齢になったら、徐々に引き算をしていくといい」と書いてきました。 引き算が必要なのは、願望や欲望、相手に求めること、自分に課すこと。これらをだんだんに引き下げていけば、いまのままで人生の満足度も深まっていくでしょう。 一方、足し算もしていくべきです。足し算というのは、これまで経験してこなかったことにチャレンジしてみること。
「もう年だから」とか「いまさら」などと言わずに、新しいことをプラスしていくようにしましょう。 私の友人も、定年退職後、「これまでしたことがないことに誘われたら絶対にやってみる」と決めて、楽しそうです。
いまやらなければ、もう二度と機会がないかもしれないからと思ったらしく、ホエールウォッチングにも行ってきたし、気球にも乗ってきたのだとか。 そば打ち体験に誘われればもちろん行くし、これまで関心がなかった演歌歌手のコンサートまで行って、「ナマの歌は迫力があったよ」と顔をほころばせていました。
◆今後の人生を豊かにしてくれるもの
これは食に関しても同じで、食べたことがなかったものも一度は口にしてみるようにしているといいます。 なかには、食べてみたらとってもおいしくて、これまで食べなかったのが残念と思ったりするものもあるようですから、彼の足し算は大成功ですね。 年を重ねたいま、積極的に新しい体験に挑戦するという足し算志向は、今後の人生を豊かにしてくれそうです。
保坂隆