厚生労働省が公表している「令和4年簡易生命表」によると日本の平均寿命は、男性が約81歳、女性は約87歳だそう。年齢を重ねるごとに「老い」を感じる場面は増えますが、91歳で評論家として活躍している樋口恵子さんは、「せっかくの人生、機嫌よく生きなければもったいない!」と話します。
さらに樋口さん、「『楽しく』はちょっと難しくても、『楽しげに』なら誰でもできる」と言っていて――。
【書影】樋口さんの愉快な日々を実況中継!『老いの上機嫌-90代! 笑う門には福来る』
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◆楽しげに生きる 私は、いつも「ご機嫌に生きなければ損」
「楽しげに生きよう」と自分に言い聞かせています。
「そんなこと言われても、楽しいことなんてそれほどないのに。私はそんなふうにできないわ」とおっしゃる方。お気持ち、お察しします。
また、高齢になると、年齢ゆえの衰えに悩まされることが増えるのも事実です。 生きていれば、いつでも上機嫌でいられるわけではありません。 とくに高齢期となれば、不機嫌のタネはそこここに! 怪我や病気、身体の衰えなど、落ち込む材料はいくらでもあります。 私もスタスタ歩こうと思っても歩けないし、人と会話していても固有名詞がすぐに出てこない……。
歯がゆいことが多々あります。 でも「楽しく生きる」と「楽しげに生きる」というのは、似て非なるものです。 「楽しく」はちょっと難しくても、「楽しげに」なら誰でもできます。
そして「楽しげに」生きるのは、じつはご機嫌をつくる知恵。 もちろん自然に楽しいことがあればいちばんいいのですが、たとえ、実際に楽しいことがなくてもかまわないのですよ。
◆笑顔 「楽しげに生きる」ための第一歩、それは口角を上げて笑顔をつくること。
高齢になると「への字口」になる人も増えます。 すると不機嫌そうに見えるので、なかなか人が寄ってこなくなっているのではないでしょうか。
そこでまずは形から入りましょう。すると案外、心持ちも変わるものです。
実際、最近の研究によると、笑顔をつくるだけで筋肉の動きが脳に伝わり、脳が錯覚して実際に楽しい気分になるとか。ようは上手に、自分の脳を騙すのですね。 そして、楽しげな表情になると、あ~ら不思議、人が集まってきます。
それに笑顔をつくるには表情筋を使うので、習慣にすると頬のたるみも少しは改善されるかもしれません。 もう、いいことずくめではありませんか! そうなればしめたもの。 たとえ形から入ったとしても、楽しい気分になれば免疫力が上がるし、生活習慣病などの予防にも効果がありそうです。場合によっては、不安感や痛みもやわらぐらしいのです。
◆笑いヨガ そういえば「笑いヨガ」なるものもあるそうですね。
ハハハハハと大きな声を出して笑い、呼吸法と組み合わせることで、心身の健康を増進させるとか。 血液の循環もよくなるし、横隔膜を使い筋力も養われるので、病院や高齢者施設で取り入れているところもあるそうです。
みんなで「笑いヨガ」をやっているうちに、本当に楽しい気分になってくると聞いたことがあります。 ちなみに私は、ちょっと落ち込むことがあっても、わが家の猫たちを撫でていると笑顔になります。 文字通り猫撫で声で「なんでそんなにかわいいのぉ~?」「いい子ねぇ。だ~い好き」などとおバカなことを言っている自分に気づき、ついひとりで、くくくっと笑ってしまうことも。 私にとっては猫の存在も、「楽しげに生きる」に役立っているようです。
◆魔法の言葉 皆さんも楽しげにしていると、本当に楽しい気持ちになってきますよ。
しかもお金は1円もかからないのですから、断然お得! “老い”の季節に福を呼び込むための極意かもしれません。 さらにヒグチさん、行き詰まったときは、「まっ、いろいろあらァな」と声に出します。「いろいろあらァな」は“魔法の言葉”。 自分に言い聞かせていると、なにがあってもあまり悲観的になったり落ち込んだりせず、楽天的でいられます。
楽天的でいるクセがつくと、生きるのが楽になるし、日々「楽しげに」なりますよ。 年齢を重ねていくにつれ、健康面や経済面など、不安も多くなるでしょう。だからこそ、「楽しげに生きること」をどうか忘れずに! ※本稿は、『老いの上機嫌-90代! 笑う門には福来る』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
樋口恵子