裏金「納税するつもりない」 詳細は「知らない」 安倍派幹部4人が言い張る根拠の「今さら感」(2024年3月2日『東京新聞』)

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、不記載が5年間で総額約13億5000万円もあった安倍派の幹部4人が出席した1日の衆院政治倫理審査会。いつ裏金づくりが始まり、なぜやめられなかったのか。国民が抱く不信と疑念に対し、4人は「反省」を口にしたが、詳細は「知らない」「存じ上げない」と異口同音に繰り返した。裏金を国会の議員事務所で保管して秘書の判断で支出していたのに、納税を否定するなど、国民感情を逆なでするような責任逃れの弁明が相次いだ。(井上峻輔)

◆過去の経緯、森喜朗元首相に確認する事も拒む

 裏金づくりがいつから始まったかについて、安倍派で事務総長を務めた西村康稔経済産業相は「歴代会長と事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことだ。判然としない」と回答。塩谷立文部科学相も「二十数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」と述べるにとどめた。
衆院政倫審に出席した(左から)西村康稔前経済産業相、塩谷立元文部科学相、高木毅前国対委員長、松野博一前官房長官(いずれも代表撮影、コラージュ)

衆院政倫審に出席した(左から)西村康稔経済産業相塩谷立文部科学相、高木毅前国対委員長松野博一官房長官(いずれも代表撮影、コラージュ)

 それならば、過去に派閥会長を務めた森喜朗元首相に確認すればいいのではないか。野党側から森氏に尋ねるよう求められたが「私が聞くと口裏を合わせたと言われかねない」(西村氏)と応じず、違法行為が長年、行われてきた実態は分からないままだった。

◆還流復活のいきさつも、うやむや

 もうひとつの大きな疑問は、かつて派閥会長だった安倍晋三元首相がノルマを超えたパーティー券収入の還流中止を決めたのに再開された経緯だ。
 いつ誰が復活を決断したかについて、経緯を知らないと話した西村氏の後任で事務総長になった高木毅前国対委員長は「誰がどんな形でそうしたのかは、私には分からない」と答弁し、真相を確認しようとする姿勢すら示さなかった。塩谷氏も曖昧な説明を続け、謎の解明には至らなかった。
 裏金に関し、事務総長としての監督責任を問われた松野博一官房長官は「道義的な責任はあると思うが、不記載の監督責任を求められるものではない」と開き直った。

松野博一官房長官は事務所金庫に800万円

 裏金の扱いや使い道に関しても「国民感覚とかけ離れた永田町の常識」(塩谷氏)が明るみに出た。松野氏は国会内の自らの事務所で約800万円の裏金を保管していたことを認め、立憲民主党枝野幸男前代表は「金庫の中に自由に使えるお金が800万円もあった。それに所得税がかからないのは理不尽だ」と追及した。
 政治活動以外に使った分や未使用分は雑所得として所得税の課税対象になり得るが、松野氏は「会合費など政治目的と認められるものに支出し、領収書もある」と強弁。塩谷氏も「政治活動に使用しているので、納税するつもりはない」と言い切った。

◆「納税者は納得できない」

 枝野氏は「今になって政治活動だったから払えませんと言っても納税者は納得できない」と厳しく批判。与党の公明党の中川康洋氏ですら「不記載分の収入に支出を近づけるため、領収書をかき集めたのではないかと思えてしまう」と不信感を示したが、説得力のある弁明は聞かれなかった。