「行き場ない怒り、悲しみに光」川口クルド問題でメディアの役割とは 地元女性メール全文(2024年3月1日『産経新聞』)

 
クルド人らによる騒ぎがあった市立医療センター周辺=昨年7月4日、埼玉県川口市(読者提供)

埼玉県川口市に住む30代の女性が制作したクルド人問題に関するメッセージ画像を産経ニュースで紹介したところ、女性から「市民の抱える行き場のない怒り、悲しみに光を当てていただいた」とするメールが届いた。画像は、同市内などに在留するトルコの少数民族クルド人と地域住民の軋轢の中、「苦しんでいる市民の声や市民の人権は無視ですか?」と訴える内容。女性は「市民の意見を聞こうともしないメディア」に疑問を投げかけている。移民受け入れに対する報道をめぐっては、過去の欧州の経験でもその役割が問い直されている。

欧米メディアも「報道しない自由」

欧米では現在、不法移民を含む移民の増加による社会の混乱が、国家的な課題となっている。その背景として、メディアが「ヘイト」「差別」と批判されることを恐れるあまり、必要な報道をしてこなかったとの指摘が出ている。

2017年に英国で出版され、ベストセラーになった「西洋の自死」(ダグラス・マレー著)によると、英国の世論調査で国民の過半数は移民の受け入れに否定的だったのに対し、メディアの多くは賛成の論調を張った。

その後、英国をはじめ欧州が大量の移民を受け入れるにつれ、移民による犯罪が頻発するようになったが、欧州のメディアは「人種差別主義者」と呼ばれるのを恐れて、そうした事実を極力覆い隠そうとしたという。

英国で04~12年、パキスタン人らの集団が11~15歳の少女らを性的に暴行し人身売買した事件では、国名や宗教名などはほとんど報じられず「アジア系」とだけ伝えられた。

ドイツの都市ケルンで15年の大みそか、約1千人の外国人らが数百人の女性を集団で性的暴行し、金品を奪った事件は当初、大手メディアが報道せず、事件が明らかになったのは数日後のインターネットのブログを通じてだったという。

国会質問が「ヘイトスピーチ

現在のわが国のクルド人をめぐる報道はどうか。その多くは、難民認定申請を繰り返す彼らが法的に不安定な立場に置かれているとして、同情的に扱っている。クルド人そのものの報道も少なく、取り上げられる際は、好意的な報じ方が一般的となっている。

2月26日の衆院予算委で、川口市が地元の議員が外国人の治安問題について、民族名の名指しを避けながら質問した際も、「ヘイトスピーチだ」などとするジャーナリストの談話を掲載した通信社の批判記事が配信された。

川口市内の女性が作成したメッセージ画像

今回、メッセージ画像を制作した女性は子育て中で、一部のクルド人による危険行為におびやかされながら生活しているという。画像には「ネイティブ・ライブズ・マター(地域住民の命は大切)」と書かれ、《私たちの存在を、消さないで。》《差別やヘイトは絶対ダメ!でも犯罪や迷惑行為に苦しんでいる市民の声や市民の人権は無視ですか?》と訴えている。

女性は産経新聞に寄せたメールで、わが国のほとんどのメディアについて「もはや信用ができない状態」などとつづった。

全文をほぼそのまま紹介する。

「ペンのチカラ信じたい」

自分のような市民の小さな声を拾い上げてくださり、本当に感謝しております。

川口の外国人問題については、貴社以外のメディアは、ほとんど市民の声を聞こうともせず、外国人が起こした事件・事故・迷惑行為を極小化し、「体感治安が悪化しているのは、川口市民が外国人に対して偏見を持っているからだ。もっと川口市民が歩み寄り外国人を理解するべき」といった、角度がつきすぎた論調に無理やり導こうとしているので、もはや信用ができない状態で、行き場のない怒りを抱いておりました。

この問題に悩んでいる多数の川口市民も同様の気持ちを抱いている状況です。

そのため、記事によって、この「市民の抱える行き場のない怒り、悲しみ」に光を当てていただき、本当に感謝しております。

私は貴社の報道とそのあり方を拝見し「ペンのチカラ」を、改めて信じたいと思っているところです。

お忙しい中かと思いますが、どうぞご自愛くださいませ。

体験や意見をお寄せください

【あて先】digitalhodo@sankei.co.jp(都道府県、年齢、性別をお書きください)

「地域住民の人権は無視ですか?」地元女性制作の画像急拡散

病院でクルド人「100人」騒ぎ、救急受け入れ5時間半停止