予備選がたけなわの米大統領選で…(2024年2月26日『毎日新聞』-「余録」)

企業に「シュリンクフレーション」をやめるよう求めるバイデン米大統領=2024年2月11日、ホワイトハウスの公式YouTubeから


 予備選がたけなわの米大統領選でバイデン大統領が連呼する言葉に「シュリンクフレーション」がある。シュリンクは「縮む」の意味で、食品会社などが値段を変えずに中身を減らして商品を販売することを言う

▲最近もプロフットボールNFLの王者決定戦スーパーボウルに合わせて発信した動画が話題になった。多くの国民が菓子やドリンクを手にテレビなどで観戦する大イベントを前に「ぼったくりをやめるよう求める」と企業に訴えた

▲「グリードフレーション」も常とう句だ。「強欲」と「インフレ」の合成語だが、こちらは「便乗値上げ経済」を指す。与党の民主党は「企業は庶民を犠牲にして荒稼ぎしている」と批判し、今月、規制を強化する法案を議会に提出した

▲堅調な経済を「世界最強」とアピールするバイデン氏だが、人気は一向に高まらない。対抗馬と目される共和党のトランプ前大統領の破竹の勢いに押され気味だ。敵陣の有力基盤の大企業をたたいて支持を得ようとする戦略が透けて見える。果たしてうまくいくか

▲世界的な原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇が続く中、多くの企業が生産の効率化や経費の削減に取り組んでいる。国を問わず消費者を欺く行為は許されないが、涙ぐましい企業努力まで切り捨てるなら反発を招くだけだろう

▲春の食料品の値上げが気になる季節になった。調査会社の予想では値上げ品目は昨春に比べて大幅に減りそうという。我慢はしつつ、厳しい目を持って品定めしたい。