富山県内の公的病院で昨年度の薬剤師の採用充足率が37%だったことが県のまとめで分かった。「くすりの富山」として知られる本県だが、薬学部に在籍する県出身者の割合は全国45位にとどまる。県は今年度から富山大薬学部に国立大では初の地域枠を設置し、テコ入れを図っており、長期的な視野で薬剤師を確保する姿勢だ。(川尻岳宏)
県によると、県内23の公立病院では昨年度、計42人を募集したが、採用は15・7人(非常勤は常勤として換算)だった。過去4年と比較しても50%を超えたのは22年度の53%だけで、不足傾向は続いている。充足率は、製薬企業が45%、県職員が30%で、病院と同様に改善は見られなかった。
一般社団法人薬学教育協議会などによると、全国の6年制薬学部に在籍中の県出身者は345人。人口1000人当たりの順位では前年度より1上昇したが、秋田、岩手に次ぐ低さだ。
富山大薬学部の卒業生も県外の薬局などに就職してしまう割合が多い。今年3月に薬学科を卒業した学生のうち、県内就職は13人(24%)にとどまった。就職先で最も多かったのは、病院や企業よりも初任給が高いとされる保険薬局(57%)で、病院(30%)や企業(7%)を上回った。
富山大「地域枠」でテコ入れ
富山大薬学部には今年度、計10人が地域枠で入学した。卒業後9年間、県内の製薬企業や病院で勤務すれば、在学中に支給された奨学金や修学費用(約710万円)の返還が免除される。学生には在学中、製薬企業でのインターンシップなどが必修化されている。
富山大によると、今春の入学生には病院での就職を希望する学生が多く、行政志望も2人ほどいるという。松谷裕二・薬学部長は「地域枠の科目を通して、学生がどう育っていくか注視していきたい」と話した。