5日、品川区八潮の八潮児童センターには、多くの親子連れがコメを受け取りに来ていた。4人の子どものうち、小学生の長男と長女が対象だという近所の主婦の崎山かおりさん(47)は計4キロを受け取り、「子どもが食べ盛りなので助かる。物価も上がっているのでありがたい」と話した。
子育て支援策のコメを受け取る子どもたち=東京都品川区の八潮児童センターで(同区提供)
対象は区内の小中学生約3万人のうち、5日までに申し込みがあった子どもたち。給食がない夏休み期間ということもあり、区が想定していた5000人の2倍以上の約1万1000人分の申し込みがあった。区戦略広報課の担当者は「予想を大きく上回る反響があった」と驚きを隠せない様子だった。
◆頻出ワードに「直接的な食の支援」
区民のニーズをくみ取ることができた背景には、ここ数年で普及が進んだ生成AIがある。区は昨年8月、区政への要望についての全区民アンケートを実施し、約10万人から回答を得た。自由記述欄には計650万文字に上る意見や要望が寄せられた。手書きも含まれる膨大な内容を読み込み、傾向を分析するのに活躍したのが生成AIだった。
人の手では数週間かかるとみられていた分析作業も、わずか1時間半で終了。頻出ワードを抽出したところ、「日々の生活に直結する直接的な食などの支援」「健康に良い食生活」などの要望が浮かび上がった。
◆「人力で分析すると偏りが出る」
区はこれまで、子育て支援事業として、給食の無償化のほか、低所得者やひとり親を対象にした給付金支給などを実施してきた。しかし、生成AIが導き出したのは、食の支援。区内の子ども食堂の運営者から「給食がない夏休み中は栄養が不足する子もいる」という助言もあり、コメの配布を決めた。
区の担当者は「人力で分析すると、どうしても担当者の考えによって偏りが出てしまう。生成AIを使えば、そうした偏りも排除できる」と手応えを語る。
◆「情報セキュリティーに万全を」
自治体向けに人工知能(AI)導入のガイドブックを出している総務省地域通信振興課は、「これまで自治体職員の負担になっていたデータ入力などの単純作業はまさにAI向き。業務の大幅な効率化を期待できる」と活用を呼びかける。その一方で、「入力された個人情報は流出する恐れもあり、情報セキュリティーには万全を期してほしい」と強調している。