納税者と政治家の見極め(2024年2月24日『産経新聞』-「産経抄」)

 
鈴木俊一財務相

「国民が厳しい怒りも伴った強い気持ちを持っている」。鈴木俊一財務相は21日の国会で、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件に対する国民の憤りに言及した。16日に始まった確定申告に関しては「国税当局は親切な対応を」と述べる低姿勢ぶりだった。

▼SNSでは「確定申告ボイコット」という言葉が拡散され、岸田文雄首相が14日に「確定申告において、納税者に法令にのっとり適切に申告納税を」と呼びかけたことも火に油を注いだ。ただ、国民の怒りはもっともだとして既視感がある。

▼小紙データベースを引くと、平成22年2月16日の「主張」の見出しは「政治資金と税申告 納税者は皆、怒っている」だった。主な怒りの対象は、当時の鳩山由紀夫首相が実母から毎月1500万円、総額12億6千万円もの資金を受けていたのに、発覚するまで「知らなかった」として贈与税を納めていなかった件である。

▼この問題で鳩山氏は、与謝野馨財務相に「平成の脱税王」と批判され、弟の邦夫元総務相からも「兄は脱税をしている」と指摘されたが、馬耳東風だった。民主党代表時代の平成21年に、自身の故人・借名献金問題をめぐり開かれた衆院政治倫理審査会への出席は拒否し、「あくまで秘書がやったこと」で済ませた。

▼今回、不記載事件に関する衆院政倫審が開かれる運びとなったが、出席者には誠意ある証言を求めたい。大山が鳴動してネズミ一匹出てこない政治ショーは、もううんざりである。これ以上、国政を停滞させてはならない。

▼「政治の善悪は、みんな人にあるので、決して法にあるのではない」。勝海舟が喝破するように、大事なことは小手先のルール改正より人物を見極めることだろう。