今国会で、選択的夫婦別姓の実現を求める声が公明、立憲民主、日本維新の会、共産の各党から相次いでいる。ただ、令和３年の最高裁大法廷は夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断している。岸田文雄首相は２５日の参院予算委員会で「より幅広い国民の議論を得る必要がある。そのためにも国会での議論は重要だ」と述べた。
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■夫婦同一の性は定着
「選択的夫婦別姓について超党派で議論を深めて実現してもらいたい」 立民の三上絵里参院議員は２６日の参院予算委で、加藤鮎子男女共同参画担当相や上川陽子外相に対し、こう訴えた。上川氏は選択的夫婦別姓の実現を目指してきた経緯がある。三上氏は選択的夫婦別姓についての考え方も尋ねたが、加藤氏と上川氏は閣僚の一員であることを理由に「個人的な見解は控えたい」と述べるにとどめた。
選択的夫婦別姓を巡っては、平成８年に法制審議会（法相の諮問機関）が夫婦別姓の導入を答申した。しかし、最高裁大法廷は令和３年６月、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成２７年の最高裁判決を踏襲するとの判断を下している。
ここまで法制化に至っていない背景には、国民の十分な合意が得られていないとの指摘がある。 内閣府が令和３年度に実施した世論調査で、選択的夫婦別姓の導入について容認派は２９％で、夫婦同性の維持派は２７％とほぼ変わらなかった。ただ、１８～２９歳に限ると容認派は４０％となるなど、別姓を容認する割合は若年層ほど大きい傾向にある。
■皆既日食みたい
国会では、与野党から選択的夫婦別姓の導入を急ぐよう求める声が続出している。公明党の石川博崇参院議員は２５日の参院予算委で、夫婦同性の「弊害」について、性を変える際の銀行口座やパスポートの名義変更の負担に加え、登記手続きや契約手続きで旧性を使用できない場合もあるなどと指摘し、「議論を加速して結論を出す時期が来ている」と語った。
日本維新の会の高木佳保里参院議員も１５日の同委で「選択的夫婦別姓が認められていない中で、性を変えることが多い女性が生きづらさを感じている。未婚化にもつながっているともいわれる」と強調した。
共産党の小池晃書記局長も同日の同委で、同党と政策や意見が対立するケースが多い経団連の十倉雅和会長が選択的夫婦別姓の導入を掲げていることを挙げて、「十倉氏と小池が同じことをいっている。皆既日食みたいなものだ。こんなことはめったにない」と訴えた上で「自民党のごく一部の特殊な（選択的夫婦別姓に反対する）声を上げている人がいるだけだ。ほとんどの人は『世界では当たり前だからやろう』といっている」と持論を述べた。
これに対し、首相は「自民の中でも推進する人間もある一方、慎重な議論もある。その背景にはこの問題に対する認識がある。それを踏まえて国会でどのような議論を行うか判断する」と述べている。（奥原慎平）
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