大阪大が「共生」をテーマに実施した大学院生対象の教育プログラムで、男性教員らによる女子学生へのセクハラ行為などが多発していた問題を巡り、プログラムの運営側が「報道を阻止しようとしたが、できなかった」「メディアにうまく利用された」といったメールを履修生らに送っていたことが21日、関係者への取材で分かった。
運営側の阪大大学院人間科学研究科の澤村信英教授は取材に「(報道による)二次被害防止のために送った」と釈明。ただ、メールの文面にはハラスメント問題に対する謝罪はなく、内部関係者からは「問題を軽視した姿勢で、被害者の二次被害にもつながりかねない」との批判が上がる。
問題を巡っては昨年1月、元履修生の女性から相談を受けた大学側が調査を実施。聞き取りの結果、複数の女子学生に対するハラスメント行為があったことが判明。加害側として男性助教4人の名前が挙がったという。
運営側は今年1月、「男性優位」の組織体質に問題があったとして、謝罪や改善策をまとめた文書をプログラムのホームページ(HP)に掲載。
産経新聞が今月20日付朝刊で問題を報じると、澤村教授らは同日午後に元履修生や現履修生らに「新聞報道について」と題するメールを送信した。
メールでは、報道自体が履修生らの二次被害を誘引するとし、「記事の公表を阻止できなかったのは私たちの責任」と言及。HPの文書については「自戒と反省を込めてHPにあげた文章でしたが、マスメディアにうまく利用される形となってしまいました」とした。
メールの内容に、ある内部関係者は「共生の大切さをうたいながら、ハラスメント自体をうやむやにする姿に悲しみを覚える」としている。 大学側は20日、「一連のハラスメント事案には精査すべき点も多く残されている」などとして、HPの文書をいったん取り下げた。