文科相不信任案否決 政権の自浄能力欠如またも(2024年2月21日『河北新報』-「社説」)

 自民「1強」の国会はまたしても、国民の感覚と懸け離れた結論を下した。

 宗教法人を所管する政府の責任者として、その任に堪えるのか。選挙支援を受けたかどうかさえ「記憶がない」と繰り返す人物に国会議員が務まるのか。自浄能力を欠く政府、自民党に深刻な不安を感じざるを得ない。

 2021年衆院選で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体から支援を受けたとされる盛山正仁文部科学相不信任決議案がきのう、衆院本会議で否決された。

 不信任案は立憲民主党が提出。共産、国民民主両党は賛成し、自民、公明の与党と日本維新の会が反対した。

 17、18日実施の全国世論調査では、盛山氏を「交代させるべきだ」との答えが毎日新聞で78%。朝日新聞でも盛山氏は「辞任すべきだ」との声が66%に達した。民意を代弁できなくなっている国会のゆがみが、改めて浮き彫りになったと言える。

 盛山氏は昨年10月に教団に対する解散命令請求を行った当事者だが、21年衆院選では事実上、教団側との「政策協定」となる推薦確認書に署名し、推薦状を受けていたと報じられた。

 こうした関係はこれから本格化する教団との裁判で利益相反を疑われ、今後の被害者救済を巡っても政府への信頼性を揺るがしかねない。

 立民は不信任案の提案理由で「盛山氏が国民から疑念を抱かれずに公正な審理を進めることは不可能だ」と強調した。高額献金の被害者からも「盛山氏のままではとても教団と闘ってはいけない」との声が上がっており、当然の指摘だろう。

 さらに看過できないのは、自民党が22年に行った所属議員と教団の接点に関する「点検」に対し、盛山氏が選挙支援の経緯を報告していなかったことだ。

 岸田文雄首相は「過去の関係はともかく、現時点で教団側と一切関係がないのを前提に任命した」と釈明し、盛山氏を続投させる考えを示してきたが、そもそも「過去の関係」を正確に把握できなかった点検の不十分さを反省する気配は全くない。

 盛山氏が野党の追及に対し「記憶がない」などと不誠実な答弁を繰り返し、説明責任を果たそうとしなかったことも忘れてはなるまい。

 文科省が定める小学校「道徳」の学習指導要領は、その目標に「自己をみつめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める」「道徳的な判断力、心情、態度を育てる」ことを掲げている。

 教団側による選挙支援疑惑について、盛山氏は「これまで何ら恥ずべき行動は取ってこなかった」と語っている。果たして十分に自己をみつめ道徳的な判断力を発揮したと言えるのか。多くの国民は疑っているはずだ。