経済安保「機密情報の指定基準などは国会で議論すればよい」 議論を尽くさず法案を了承してしまった与党(2024年2月21日『東京新聞』)

自民党20日の総務会で、国が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入を盛り込んだ重要経済安全保障情報保護・活用法案を了承した。公明党も同日、了承。週内には与党内手続きを終え、2月末にも閣議決定される見通しだ。機密指定の基準があいまいで、国民の知る権利や企業の営業の自由が侵害される恐れが指摘される法案だが、与党では議論を尽くさないまま、審議の舞台は国会に移る。
 自民党の法案審査を担当した部会のメンバーは「機密情報の指定基準など細かい点は国会で議論すればよい」と語った。
 米欧などでは機密度に応じて情報を「機密(トップシークレット)」など3段階に区分する。新たな法案は政府が保有する「秘」級の経済安保情報を保全対象に。具体的にはインフラや物資の供給網など「重要経済基盤」に関する情報のうち、漏れると安全保障に「支障」を及ぼす恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定し、漏えいに最長5年の拘禁刑を科す。
 安全保障に「著しい支障」の恐れがある「機密」や「極秘」級の情報は特定秘密保護法の指定対象とし、漏えいには懲役10年以下の罰則を科す。

◆「特定秘密保護法のような世論にならないように」

 自民党では「(強い反発を受けた)特定秘密保護法の時のような世論形成にならないように」「情報漏えいの罰則は10年にすべきだ」などの意見が上がったが、法案自体への異論はなかった。公明党でも目立った懸念の声は出なかった。
 適性評価は民間企業の従業員や公務員が対象で、本人の同意の上で犯罪歴や家族の国籍などを調べる。評価の有効期間は10年。2022年成立の経済安保推進法に盛り込む方針だったが、慎重論を受けて見送り、付帯決議で「必要な措置を講ずる」としていた。(近藤統義)