浅尾大輔著『立春大吉』(新日本出版社)は、小さな町の大きな闘いを描いた痛快小説です。本紙の連載がこのほど本になりました。「日本共産党の歴史の中で、現代の闘いを描くことに挑戦した」と作者はいいます
▼町立病院の入院・透析廃止を突如打ち出した町長に対して、6人の高齢女性が立ち上がります。いつも自民党に投票してきた彼女たちが、共産党の若い女性町議と力を合わせ、妨害に負けず、ついに有権者の半数近い町長リコール署名を集めます
▼浅尾さんの住む愛知県東栄町がモデルです。「地方でも国を揺るがすような運動を起こせる。とくに、いま時代を引っ張るのは女性たちという思いがあります」と
▼小林多喜二唯一の新聞連載小説も女性たちが主人公でした。「都(みやこ)新聞」に連載した「新女性気質(かたぎ)」(のちに「安子」と改題)。家族の生活を背負う内気な姉・お恵と、組合活動に飛び込んでいく妹・安子。対照的な2人の支え合いを描きました
▼浅尾さんは「政治的なテーマを書くと紋切り型になる危険があります。僕も毎日飽きずに読んでもらうために苦心した」と話します。「多喜二は失敗を恐れず、政治的なテーマで芸術性とエンタメ性の結合に挑みました。『蟹工船』はそれに成功した傑作です」
▼きょう20日は、小林多喜二が殺されて91年。今年も各地で記念のつどいが開かれます。3月17日、東京の杉並・中野・渋谷多喜二祭の記念講演は浅尾さんです。『蟹工船』のエンタメ性を深掘りしたいと意気込みます。