確定申告と首相(2024年2月20日『しんぶん赤旗』-「主張」)

「適切な納税」言う資格あるか

 消費税のインボイス制度が昨年10月に強行されてから最初の確定申告が16日から始まりました。インボイス登録事業者となって初めて消費税を申告することになったのは142万事業者に上り、膨大な実務負担と、新たな消費税負担が迫られます。

 国民は1円単位の細かい計算を厳格に求められるのに、自民党派閥や議員が収支を偽って裏金づくりを組織的に行っていたことは納得できない―怒りが沸騰する中での確定申告です。岸田文雄首相は「適切な納税」を国民に求めましたが、「どの口が言うの?」など批判が相次いでいます。

人権無視の税務調査横行

 コロナ禍の影響と物価高騰など多くの業者は苦境にあります。その中で誠実に申告し、納税している小規模事業者を犯罪者扱いする人権無視の税務調査が広がっています。朝、税務署員が6人で突然押しかけインターホンを執拗(しつよう)に鳴らしたり、調査もしていないのに「悪質、悪徳」だと決めつけ「追徴金が1000万円以上出る」などと脅したりするケースも増えています。任意調査からの逸脱であり、法律で定められた事前通知も行わない違法調査そのものです。

 沖縄県では、税務調査で業者に民主商工会からの脱会を求め、民商退会を調査終了の条件にする事件も起きました。全国商工団体連合会日本共産党などの抗議や申し入れに国税庁は「退会を強要することはない」と言いましたが、事実関係の調査は行わず、業者への謝罪もありません。

 本来自由であるべき納税者同士の相談活動に、国が介入する口実にされかねない「税務相談停止命令制度」が4月から始まります。

 納税者同士が税金について相談し、教え合うことや納税者がどの団体に所属するかは自由です。公権力を持つ国税庁・税務署が民商脱会を指示したとすれば、民商への介入であり、憲法が保障する思想・信条の自由、結社の自由の乱暴な蹂躙(じゅうりん)です。

 税額が確定する前に納税者の申し出によって見込み額をあらかじめ納税する「予納制度」も悪用されています。税務調査が始まって間もないのに、所得税・消費税1550万円を一括で支払わされたという業者もいます。税額が多額になった根拠について説明が全くないばかりか、税務署員が勝手に記入した「予納の申出書」にサインをさせられました。

 中小業者には、事業に必要だと計上した経費すら認めようとしないのに、自民党の裏金事件をめぐって税務調査を行わない国税庁に批判が上がるのは当然です。

徹底調査し適正な課税を

 裏金事件で多額の政策活動費が問題になっています。現行法では政党本部から政治家個人に政策活動費の名目で支給されたものは「領収書不要」です。5年間で47・7億円の政策活動費を受け取っていた二階俊博自民党元幹事長が代表を務める政党支部政治資金収支報告書の支出には「クレジットカード代金支払い」とだけあり、領収書はありません。一方、インボイス登録事業者はカード利用明細書だけでは書類として認められません。二階氏の政策活動費を雑所得として試算すると課税額は35億円ともされます。自民党裏金事件の解明と税逃れを許さない国税当局の徹底調査が不可欠です。