東京都内で3日に開かれた東京マラソン(東京新聞など共催)の沿道では、さわやかに晴れ渡った青空の下、最高気温13・4度の陽気に誘われ、100万人を超える人たちの声が響きわたった。その熱い声援を背に、市民ランナーはそれぞれの思いを胸に、東京の街を走り抜けた。
◆「全てが桁違いに楽しかった」
「沿道の声援に支えられゴールできた」。福岡市の歯科医師樋口敬洋(たかひろ)さん(48)は、知的障がい者男子の部で出場した自閉症の長男、拓弥さん(20)の伴走者として出場。親子で10.7キロメートルを完走した。
東京マラソンは16年前、福岡から都内に赴任した記念として人生初のフルマラソンに挑戦し、走る楽しさに目覚めた思い出の大会だ。東京の街並み、沿道の声援、ボランティアの笑顔―。「全てが桁違いに楽しかった」。今年の開催日翌日の4日に20歳の誕生日を迎える息子に、この景色を見せたいと応募した。
◆「生まれてからのことを思い出して…」
特別支援学校を卒業後、生活介護事業所で農作業や菓子作りをする拓弥さん。通所時にかぶるマリオの帽子姿でスタート。途中、立ち止まったり座り込んだりする度に、沿道から「マリオがんばれ!」などと声援や拍手が途切れず。温かな沿道の力に後押しされ親子で一歩ずつ足を進めた。
10.7km知的障がい者男子でゴールする樋口拓弥さん(左)と父の敬洋さん
完走メダルを首に掛けて「楽しかった」と喜ぶわが子の姿に「生まれてからのことを思い出してじーんとした。この経験が、自分の生きる道を切り開くきっかけになれば」と敬洋さん。
「人が支えあい、喜びを分かち合うことが当たり前の社会になってほしい」と願っている。(長竹祐子)