漫画のドラマ化にあたって原作者の意思はどこまで尊重されているのか。テレビ界、出版界が真摯(しんし)に省みる必要がある。
漫画家の芦原妃名子(ひなこ)さんが、自身の作品である「セクシー田中さん」の番組制作過程を巡るトラブルが表面化する中で亡くなった。脚本について、制作した日本テレビ側と意見が対立していた。
日テレは芦原さんの死から2週間以上たってようやく、ドラマの制作部門から独立した特別調査チームを設置すると発表した。
企画、制作にあたり原作をどう位置付け、原作者とどのように意思疎通を図ってきたのか。徹底的に調査して公表すべきだ。
ドラマは昨年10~12月、全10話が放送された。
芦原さんによると、ドラマの内容は必ず漫画に忠実で、終盤は原作者があらすじやセリフを用意するなどの条件を付けていた。代理人の小学館から日テレに伝えていたという。
脚本段階では原作と大きく乖離(かいり)していたため、加筆修正し、最後の2話分は自ら執筆した。
だが、最後の2話分を執筆しなかった脚本家が、「苦い経験」とネット交流サービス(SNS)で内情を明かし、物議を醸した。亡くなる直前に芦原さんは、一連の経緯を説明する投稿をしていた。
小学館は、芦原さんの要望をドラマ制作サイドに伝えていたとの公式コメントを出した。日テレは「最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿」として放送したと説明している。しかし、なぜこのような事態に陥ったのかは不明のままだ。
漫画を原作にしたドラマは近年増えている。その背景には、原作ファンがいるため、一定の視聴率が見込めるというテレビ局の思惑があると指摘される。
原作者には意に反して作品を改変されないなど、著作者人格権が法律で保障されている。ネット上では今回の件をきっかけに、無断で内容を変更されたケースなどを明かす漫画家も出ている。
日テレの特別調査チームは、トラブルが起きやすい構造的な問題がなかったか究明すべきだ。
創作に携わるすべての人が安心して仕事ができる環境作りが求められる。