ビキニ被災70年(2024年2月18日『しんぶん赤旗』-「主張」)

核実験被害救済・核廃絶の声を
 南太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験(1954年3月1日)によるビキニ被災事件から70年を迎えます。核兵器のない世界への歩みに対する重大な逆流が生まれている今、反核平和の世論を大きく発展させることが求められています。

隠蔽し放置した日本政府
 ビキニ周辺海域で操業していた1400隻を超える漁船が被ばくしたと言われます。マグロ漁船・第五福竜丸の無線長・久保山愛吉氏が「ヒロシマナガサキ」に続く原水爆の犠牲者となったことに国民の怒りが広がり、反核運動が発展しました。55年に第1回原水爆禁止世界大会が開かれ、56年には日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が結成されました。

 一方、米政府は反核世論を抑え込むために、わずかな「見舞金」で、日本政府に「政治決着」させて事件の幕引きをさせました。広島と長崎の原爆被害については、国家補償がいまも実現されず援護策の抜本的改善が必要ですが、同時に被爆者の運動によって政府はさまざまな施策をとってきました。アメリカの核戦略に追随し、第五福竜丸以外の船舶の被ばくを隠蔽(いんぺい)し、被災者を70年にわたり放置してきた政府の責任は重大です。

 現在、被ばくした船員の救済を求める労災認定訴訟(東京地裁)と、「政治決着」で賠償請求権が奪われたことへの損失補償を求める訴訟(高知地裁)がたたかわれています。被災者は高齢化しており時間の猶予はありません。国には、核実験被ばく者援護に係る特別措置法の制定など、立法措置による被災者の救済を図ることも求められています。政府は被害の全容を明らかにし、速やかに救済と補償をすべきです。

 マーシャル諸島アメリカは、ビキニ水爆実験を含め1946~58年までに67回もの核実験を行いました。「死の灰」が降り注ぎ、多くの島民が被ばくし、土地を離れなければなりませんでした。

 それだけでなく、核実験の被害者は、ネバダ州などアメリカの各地、旧ソ連カザフスタンなど世界中に存在します。フランスはアルジェリアポリネシアで核実験を実施してきました。イギリスはオーストラリアで、中国は新疆ウイグル地区で大気中核実験を行ってきました。どこでも住民の苦しみは続いています。

 核実験被害者の救済と支援、実験場周辺の環境修復は、核兵器の禁止・廃絶をめざす取り組みと切り離せません。核兵器禁止条約は被爆者と核実験被害者の「容認しがたい苦難と損害」(前文)を認識し、その支援と環境修復(第6条)と国際的な協力(第7条)を義務付けています。これらを実践する作業グループも設立され、被害者からの聞き取りや「国際信託基金設立」の検討などが、市民社会も参加して始まっています。日本政府は禁止条約参加以前にも、唯一の戦争被爆国として、この取り組みに積極的に協力すべきです。

被爆80年への跳躍台
 来年は「ヒロシマナガサキ被爆80年です。自公政治を終わらせ、禁止条約に参加する政府を実現しなければなりません。静岡市で開催される3月1日のビキニデー集会とシンポジウム(2月28日)、原水爆禁止日本協議会の全国集会(同29日)を運動発展の跳躍台として成功させることが必要です。