杉並区議、選挙公報に「差別イラスト」 当事者ら人権救済申し立て(2024年2月14配信『毎日新聞』)

杉並区の田中裕太郎区議が選挙公報に掲載した差別的な内容のイラストについて東京弁護士会への人権救済申し立てなどを行った鈴木信平さん(右端)ら=東京都杉並区で2024年2月13日午後3時28分、藤沢美由紀撮影拡大
杉並区の田中裕太郎区議が選挙公報に掲載した差別的な内容のイラストについて東京弁護士会への人権救済申し立てなどを行った鈴木信平さん(右端)ら=東京都杉並区で2024年2月13日午後3時28分、藤沢美由紀撮影

 田中裕太郎・東京都杉並区議(48)がトランスジェンダーの人を差別する内容のイラストを選挙公報に掲載するなどして人権を侵害したとして、トランスジェンダーの当事者ら区民が13日、東京法務局と東京弁護士会に人権侵犯被害の申告と人権救済の申し立てをした。

 申し立てたのは、トランスジェンダー当事者で会社員の鈴木信平さん(45)、自営業の金正則さん(69)、翻訳家の池田香代子さん(75)で、いずれも同区内在住。

 申立書などによると、2023年4月の区議選で田中氏は、選挙公報に「女性スペースに男を入れるな!『性自認条例』を改廃し女性の人権を守る」という言葉とともにイラストを掲載。虹の入れ墨を入れ、鼻毛を伸ばし、ひげを生やした人物に「オレも女だと言い張れば女湯に入れるのネ!」というコメントが添えられていた。

 同区では、性を理由とした差別的な取り扱いを禁止する条例が同年3月に成立しており、「性自認条例」はこれを指したとみられる。田中氏は、同条例が認められれば「男が女風呂に入れるようになる」として成立に反対していたという。

 公衆浴場の管理について、厚生労働省は、男女の区別は自認する性別ではなく、身体的な特徴から判別される性別を指すとの見解を示している。申立人側は「男性が女湯に入ってくるというのは事実誤認」と指摘している。

 記者会見で鈴木さんは「自分の性について考え始めた高校生の時に(問題のイラストを)見たらどうだったか。声を上げないと今の子どもたちを守れない」と話した。池田さんは「私は性的にはマジョリティーだが、差別はマジョリティー側の問題。差別のある社会で生きることを是としないし、あの醜悪なイラストが選挙公報に載ったことを重く見ている」と話した。