プルサーマル計画 女川原発、東北電は説明必要(2024年2月15日『河北新報』-「社説」)

 原発から出た使用済み核燃料の処理を進めるため政府と事業者でつくる対策推進協議会は先月、青森県六ケ所村の使用済み燃料再処理工場の早期稼働に向けた支援強化を確認した。斎藤健経済産業相は「核燃料サイクルの中核を担う再処理工場の完工は極めて重要」と強調した。

 2年8カ月ぶりに開かれた協議会は、政府が今年検討を始める次期エネルギー基本計画の改定を見据えたものだろう。使用済み燃料の再処理を基軸とする核燃料サイクル政策の推進が検討の前提、忌憚(きたん)なく言えば、推進を既成事実化する狙いが透けて見える。

 協議会は、再処理で取り出したプルトニウムをウラン燃料と混ぜて通常の原発で使う「プルサーマル」の推進と拡大も再確認した。政府と事業者は2030年度までに最低12基でのプルサーマル実施を目指すが、現時点で予定されているのは10基で、うち実施済みは4基にとどまる。

 10基はいずれも東京電力福島第1原発事故前に各事業者が実施を表明し、旧規制基準下で認可された。事故後の新規表明はなく、30年度までの短期間に少なくとも数基を加えて実施までこぎ着けるのは至難の業だ。実現性には疑問符が付く。

 一応のめどが立っている残り6基の中には、東北電力女川原発3号機も含まれる。原発事故1年前の10年3月に宮城県と地元の女川町、石巻市から事前了解を得たが、3号機の再稼働に向けた新規制基準適合性審査は、いまだ原子力規制委員会に申請していない。

 福島第1原発は10年9月、3号機で東北に立地する原発として初のプルサーマルを開始した。5カ月後、東日本大震災の大津波に襲われた影響で、3号機は水素爆発を起こした。

 東北電はプルサーマルの実施段階で年間約0・4トンのプルトニウムを使う計画を示している。震災では女川原発にも津波が襲来し、かろうじて難を逃れた。こうした経緯を考えれば、3号機の安全性とともに審査をいつ申請し、プルサーマルの実施時期をどう見込んでいるかなどを、改めて地元に説明して理解を得る必要があるのではないか。

 先般の協議会でも東北電など事業者側は地域の理解を前提に、稼働する全原子炉で1基でも多いプルサーマル導入を検討すると強調した。プルサーマルを巡る状況も事故を経て変化しており、政府と東北電は14年前の地元了解に安住すべきではない。

 悲願とする2号機の再稼働を前に、3号機の審査申請やプルサーマルといった刺激で「寝た子を起こす」まねをしたくないと考えているわけではあるまい。一方の地元側も住民や県民の不安払拭を掲げるのなら、専ら中央レベルで話が進む現状を黙って眺めるのではなく、東北電の方針を自ら確認し直すべきだろう。