大阪万博準備の“ないない尽くし”パビリオン設計者が明かす…「強行なら能登復興の足かせに」(2024年2月17日『日刊ゲンダイ』)

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能登半島地震の被災地では、いまだ6万8000人以上が避難生活を送る…(C)共同通信社
能登半島地震の被災地では、いまだ6万8000人以上が避難生活を送る…(C)共同通信社
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 この寒空の下、6万8000人以上が避難生活を送る能登半島地震の被災地を尻目に、来年4月の開幕に向け、急ピッチで準備が進む大阪・関西万博。主催者の政府と大阪府・市、経済界は「万博と復興の同時並行」にこだわり、万博が被災地復興の妨げとなる懸念を一顧だにしない。

 岸田首相は各省庁に「復興に支障がないように」と指示したが、少しは万博に携わる現場の声に耳を傾けたらどうなのか。

「万博開催に反対ではありませんが、どう考えても半年は延期した方がいい」--。こう訴えるのは、パビリオン設計を担当する1級建築士だ。

「現状のまま強硬に準備を進めても、復興の足かせになりかねない」と語り、次のように指摘する。

「万博会場となる夢洲は、いまだに水道や電気すら通っておらず、発電機と仮設トイレが欠かせません。水道や電気などライフラインの整備が急がれるのは被災地も同じ。万博会場では春ごろから一気にパビリオン建設が始まる予定です。建機だけでなく、発電機も復興工事と奪い合いとなり、被災地に必要な数が用意できるのか懸念されます。万博準備にかかる現場の負担や被災地復興を考慮するのであれば、万博を半年延期して時間差をつくる方がメリットがある。万博準備に余裕が生まれ、労働災害を未然に防げるかもしれない。被災地に優先的に建機や人手を割いて復興も進められる。政治的なメンツが大事なのかもしれませんが、被災地の復興を何よりも優先すれば、国内外で賛同を得られるはずです」

設備関係の人手が少ない

すでに人出は足りていない…(大阪・関西万博会場、夢洲の工事現場)/(C)共同通信社
すでに人出は足りていない…(大阪・関西万博会場、夢洲の工事現場)/(C)共同通信社
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 万博協会の十倉会長は万博と被災地では必要な工事は異なるとして「復興に支障をきたすことはない」と主張するが、すでに万博準備ですら人手が足りていない状況だ。

「建設業界の深刻な人手不足は今に始まったことではありませんが、特に電気や空調など設備関係の職人さんが不足しています。パビリオン内部の設備工事に関する概算を取ると、どこも『人がいない』と口をそろえます。全国の大型プロジェクトに職人さんが駆り出されていて、10社に工事を依頼しても引き受けてもらえない状況です。万博会場は冷水供給による空調設備が導入される予定なのですが、人手だけでなく、その専用機器も足りていないようです。実装できないパビリオンも出てくるのではないか」(前出の1級建築士

 時間もインフラも人手も「ないない尽くし」の万博準備。被災地を最優先に考える政治家もいない。