能登ボランティア 善意を柔軟に生かして(2024年2月14日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 能登半島地震から6週間が過ぎるというのに、被災地で災害ボランティアの活動がなかなか広がらない。

 石川県が派遣などを一括して取り仕切っているが、うまく機能していないようにみえる。

 県によると、被災した市町から要請があった人数を派遣している。県に事前登録したボランティアは約2万3千人。これに対し実際の活動は1日当たり約250人にとどまる。

 道路が十分に復旧しておらず、断水も多いため、金沢市を拠点にバスで日帰りしている。実働は4時間程度と限られる。

 刻々と変わる被災地のニーズに対応するには、金沢だけでなく、能登半島に受け入れの拠点を増やしていくことが欠かせない。県は自治体と連携し、NPOなどの力も借りながら、善意を柔軟に生かせる体制に見直してほしい。

 初期の対応にも問題があった。

 県は当初、ボランティアが個別に被災地に入るのを控えるよう呼びかけた。地震活動が続いていて道路が渋滞する可能性があるなどの理由からだ。

 県の災害危機管理アドバイザーを務める室崎益輝・神戸大名誉教授は今月初めの記者会見で、県の呼びかけもあって個人ボランティアを非難する風潮が広がったとし「歩いてでも来てほしい、と発信すべきだった」と述べた。

 気になるのは、県がいまだに個人単位の活動を控えるよう求めていることだ。

 助けが必要な人たちがいるのに、道路が渋滞するから行くのを控えて―というメッセージは適切なのか。その結果、避難所の運営やがれきの片付けなどのマンパワーが足りず、被災者は過酷な状況に追いやられている。

 阪神大震災以降、ボランティアの経験は社会に蓄積されてきた。そもそもボランティアは行政の下働きではなく、自主と自律が出発点となる。一定の調整は必要としても、県は管理する発想ばかりが先に立っていないか。

 被災地が復興するまでには、多くの人手が要る。ボランティアの役割は、力仕事だけにあるのではない。手助けしたいと手弁当で駆けつける人たちの姿に勇気づけられる被災者もいるだろう。

 信州から北陸の被災地へボランティアに行く人も増えるだろう。基本的な装備や食料、泊まるところは自分で準備し、ボランティア保険にも加入しておきたい。現地は今も地震が続いている。安全に十分に注意したい。