復興妨げなら万博延期を…意見書案、二転三転 兵庫県議会が出した結論(2024年2月16日『毎日新聞』)

 
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大阪・関西万博について「開催を延期することもやむを得ない」と記載された意見書案の原案=2024年2月14日午後6時33分、宮本翔平撮影

 2025年大阪・関西万博について、能登半島地震の復旧・復興への影響を懸念する声が出ている。足元の関西・兵庫県議会でも国に提出する意見書案を巡って激しい議論が交わされた。「開催の延期」に言及した原案には待ったがかかり、文面は二転三転。各会派の思惑が交錯し、思わぬ結末を迎えた。

自民が原案、維新反発

 意見書案の原案が示されたのは1日付。能登半島地震の復旧・復興を巡り、「万博の関連工事は大量の人員、重機、資材などが投入され、震災復興の妨げになるのではないかと懸念されている」と指摘。「復興の妨げになるならば、開催を延期することもやむを得ない」と盛り込まれた。県議会の各会派政務調査会長会で座長を務める自民党会派の門間雄司県議が提案した。

 意見書案は混迷を深める。可決に向けて本会議に提出するには全会派の賛成が必要だ。定数86のうち最大会派は自民(37人)だが、第2会派は万博を推進する大阪府の吉村洋文知事が共同代表を務める日本維新の会系の「維新の会」(21人)。政調会長会では修正案に対して反論が出た。

 「被災地で急がれるインフラ復旧作業は土木工事。万博会場での土木工事はほぼ完了し、現在は建設設備工事だ。工事フェーズが異なる震災と万博を結び付け、開催時期の見直しに言及するのは短絡的だと言わざるを得ない」。維新の会の増山誠県議が万博に関する記載の削除を求めた。

 公明党会派も続く。島山清史県議は「復旧・復興は最優先だが、国は業界団体とともに万博を並行してやり遂げる努力をしている」と述べ、「開催時期の見直し」の文言に修正を求めた。

 議論は白熱する。自民の奥谷謙一県議は維新の主張に「復旧・復興のフェーズによって工事の種類が重なることもあり得る。未来を予測して主張するのは議会、政治の役割だ」と反論。増山県議は「なぜ万博だけをひも付けるのか理解できない。万博に限らず国の進める工事全体を見るべきで、万博を特出しして記述する必要はない」と述べた。

修正繰り返したが…

2025年大阪・関西万博と能登半島地震を巡り議論された兵庫県議会各会派政務調査会長会=神戸市中央区で2024年2月13日午後0時40分、宮本翔平撮影

 結局、意見書案はまとまらず、13日に追加開催された政調会長会で、復興と万博を巡る記載を「万博関連工事が復興の妨げにならないよう国として緊張感をもって対応する必要がある」と再修正する形で落ち着いた。

 自民の奥谷県議は「万博を特化して取り上げるのはどうかという話もあったが、関連工事で大量の人員や資材などが投入されているのは客観的に明らか。記載しないと意見書として意味をなさない」と主張。維新の増山県議は「工事フェーズが異なるという意見が反映されておらず賛同できない」と固辞した。

 公明は賛成に転じたが維新は反対し、最終的に本会議への提出は見送られた。

 万博を巡っては、高市早苗経済安全保障担当相が開催の延期を岸田文雄首相に進言。1日の衆院本会議の代表質問では、復旧・復興を優先し、開催を中止すべきだと訴える共産党志位和夫議長に対し、首相は「万博関連の資材調達等によって復興に具体的な支障が生じるとの情報には接しておらず、万博を延期、中止する必要があるとは認識していない」と答弁した。【宮本翔平】