松本人志 週刊文春提訴の第1回口頭弁論は3月28日 東京地裁(2024年2月15日)

 週刊文春に性加害疑惑を報じられたお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(60)が、週刊文春の発行元・文芸春秋などを相手取り、名誉毀損(きそん)に基づき約5億5000万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した件で、訴訟の第1回口頭弁論が3月28日に東京地裁で開かれることが15日、分かった。

 関係者によると、松本さん側は、昨年末発売の週刊文春記事に対し、筆舌に尽くしがたい精神的損害を受けたなどとして損害賠償のほか、訂正も求めている。

 松本は先月8日、裁判に注力するためとして芸能活動の一時休止を発表。ダウンタウンとしてのレギュラー番組などは、すでに浜田雅功(60)1人での収録が始まっている。

 松本の代理人はこれまでに「記事に掲載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく、およそ“性加害”に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたいと考えております」とコメントを発表。

 この発表を受け、週刊文春編集部もコメントを発表し「一連の記事には十分に自信を持っています。現在も新たな告発者の方々のお話をうかがい、慎重に裏付け取材をしております。提訴によって萎縮することなく、今後も報じるべき事柄があれば、これまで通り報じてまいります」と全面的に争う姿勢を見せている。

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松本人志氏の性加害疑惑「昔は許された」の大誤解… 成人男女の「飲み会」で“真に意識すべき”リスク(2024年2月15日)

ダウンタウン松本人志氏の性加害疑惑をめぐって「昔は許された」といった意見が聞こえてくる。 昨年7月、改正刑法が施行され「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」になった。

これを踏まえて、経済力や社会的地位のある男性が女性たちを呼ぶ“コンパ”について「男性側のリスクが高まった」という声もあるが、刑事事件に詳しい杉山大介弁護士は「なにも法改正で始まった話ではなく、リスクを考え出したら昔からあった」と言う。

成人同士のケース「なんとも言えない」

不同意性交等罪の施行によって、これまでは犯罪の成立に「暴行・脅迫」があったことの証明が必要だったところ、犯罪の成立要件が明文化され、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられるなど、これまで被害者が泣き寝入りする要因となっていた課題が改善された。

これによって「(コンパにおける)男性側のリスクが高まった」と捉えるむきがあると思われるが、杉山弁護士は「そもそも、法改正によって一概に性被害が認められやすくなったというわけではありません」と指摘する。

「たしかに、性交同意年齢の引き上げによって13歳から15歳の事件について認められやすくなったのは事実です。しかし、松本氏のような『成人同士』のケースで変わっているのかは、なんとも言えません。 というのも、法改正を推進した側の立場からは『あくまで準強制性交などにおいても取り締まることができたものを類型化しただけ』との主張がされていましたし、法制審議会の議論でも、新法によって捕捉範囲が広まるのかは不明瞭なままに法改正がなされているからです。

私自身は、法改正によって捕捉する範囲が広がると考えていますが、この点も前提になるのか疑問であることは覚えておいていただきたいです。本当に変わっているのは、法律以上に『社会の意識』なのではないかとも思います」

松本人志氏の週刊誌報道「事実無根には絶対なり得ない」

「あわよくば性行為を」といった趣旨の飲み会をやらなければいいのは大前提だが、男性が女性をコンパや飲み会に誘う際に気を付けるべきポイントについて、杉山弁護士は以下のように話す。

「注意点としては『自分がどんな立場なのか』『相手がどんな立場なのか』よく理解して接することですね。 たとえば松本氏のような立場の場合、究極的には不同意性交のような犯罪ではなくとも、セクハラ相当になるだけでも自身の商業的価値は大きく下がります。

 実際に今回の週刊誌報道も『犯罪かどうか』を論点にはしていないからこそ、『事実無根』ということには絶対なり得ないものになっています」 一方、杉山弁護士はこれまで事件に関わる中で、多くの「うその被害報告」にも接してきており、その背景には「性行為後の対応が紳士的でなかった」「彼氏に発覚してうそをついた」「スカウトなどの悪質な人間にそそのかされた」などさまざまな事情が見て取れるという。 「レイプ相当の犯罪でなくとも、たとえばナンパで身体に触れて『暴行』となったケースもあります。

  ただし先にも述べたように、これらはなにも法改正で始まった話ではありません。リスク自体は昔からありましたし、リスクがあるということも、社会の意識に合わせてとっくに顕在化しているのではないでしょうか。 男女の性に対する垣根を、かつてほどカジュアルに考えるべきではないというのが、今の社会通念に従った考えなのかもしれません」

弁護士JP編集部