自民裏金の実態 身内では解明できない(2024年2月15日『東京新聞』-「社説」)

 
 自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党所属国会議員らを対象にしたアンケート結果を公表した=写真。しかし、新たな事実や背景は判明せず、身内による調査の限界を露呈した。
 野党側は政治資金収支報告書への不記載があった安倍、二階両派幹部に国会の政治倫理審査会への出席を求めており、党総裁の岸田文雄首相は出席を促すべきだ。
 アンケート対象は国会議員374人と選挙区支部長10人。85人が報告書への不記載・誤記載があったと回答した。すでに国会に示された安倍、二階両派の議員以外に不記載などの報告はなかった。
 ただ、アンケートの質問は派閥パーティーに限った記載漏れの有無と2018~22年の不記載額の2問のみ。裏金づくりの経緯や使途を解明する意思は最初からなかったと指摘されても仕方がない。
 自民党が並行して行った安倍、二階両派の議員ら約90人への聞き取り調査では裏金の経緯や使途も質問したというが、森山裕総務会長や小渕優子選対委員長ら党執行部が議員1人当たり30分程度の聴取をしただけ。裏金の実態把握には程遠く、自浄能力を発揮しているとは言い難い。
 首相は14日の衆院予算委員会の集中審議で両派幹部らに「説明責任を尽くすよう促している」と繰り返し、政倫審出席を求めるかどうか明言を避けた。政党が個人に支出する政策活動費の廃止や使途公開、企業・団体献金の全面禁止など政治資金規正法の抜本改正にも言及しなかった。
 実態解明にも再発防止にも「ゼロ回答」を続けていては、政治の信頼回復に向けて「火の玉」になる、との言葉が空虚に響く。
 自民党は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係調査も議員の自己申告にとどまり、盛山正仁文部科学相ら閣僚に今なお新たな接点が判明する失態を招いた。
 裏金問題も身内による調査では事実を解明できないことは明らかだ。調査を第三者に委ねるか、疑惑を持たれた議員が政倫審で進んで説明するよう求める。それを拒むなら、参考人招致や証人喚問で実態を解明すべきは当然だ。