戦争でのゾウ利用は古代インドで発達し…(2024年2月15日『毎日新聞』-「余録」)

食料不足の中、慈善団体が提供する食料配布を待つ子供たち=ラファで2月13日、ロイター拡大
食料不足の中、慈善団体が提供する食料配布を待つ子供たち=ラファで2月13日、ロイター
タイのナショナルデーに合わせた大阪万博の「象まつり」で披露された戦象パレード=1970年8月13日拡大
タイのナショナルデーに合わせた大阪万博の「象まつり」で披露された戦象パレード=1970年8月13日

 戦争でのゾウ利用は古代インドで発達し、アレキサンダー大王の東征を通じて地中海世界に伝わったという。カルタゴの名将、ハンニバルがゾウを引き連れてローマに進軍した故事は有名だが、同じ頃、パレスチナでもゾウ部隊が戦った

古代エジプトシリア王国が衝突した「ラフィアの戦い」(紀元前217年)である。エジプトが最終的に勝利したものの、シリア軍のインドゾウはエジプト軍のアフリカ産ゾウを圧倒したという

▲巨大なアフリカゾウがインドゾウに負けたとは考えにくい。エジプト軍が使ったのは森林にすむ小型のマルミミゾウという説がある。それはさておき、ラフィアはエジプトとの境界に位置するガザ地区南端のラファ周辺とされる

▲ユーラシアとアフリカをつなぐ要地だからか。近代以降もたびたび戦場になった。現在はイスラエル軍のガザ侵攻で北部から追われたパレスチナ人の最後の逃げ場である

▲東京の山手線内側の約半分の土地に100万人以上の避難民が簡易テントや路上で暮らす。イスラエルのネタニヤフ首相はその人口密集地での地上作戦実施を明言した。国連トップが「破滅的な結果を招く」と警告したのは当然だろう

▲南部への避難を呼びかけながらラファの避難民の命を奪えばだまし討ちだ。ジェノサイド条約違反の声もある。バイデン米大統領が6週間の戦闘休止を働きかけ、休戦交渉が再開された。ラマダン(イスラム教の断食月)入りも近い。これ以上の戦闘継続は文明の名に値しない。