子育て支援金 国民理解得た財源必要(2024年2月14日『秋田魁新報』-「社説」)

 政府は児童手当拡充を柱とする少子化対策関連法案を近く閣議決定し、今国会での成立を目指す。育児休業給付の拡充、親の就労の有無を問わず保育サービスを利用できる制度なども盛り込み、子育て環境向上を図る。ただ、その財源について国民の理解と納得が必要なことは言うまでもない。


 今後3年間に年最大3兆6千億円の財源が必要とされる。既存予算1兆5千億円のほか、社会保障の歳出削減1兆1千億円、企業や幅広い世代から徴収する「子ども・子育て支援金」1兆円―による捻出を掲げる。

 このうち、支援金は公的医療保険料に上乗せして徴収する。岸田文雄首相は国会でその負担額を「1人当たり月平均で500円弱」と明らかにしている。

 名目こそ支援金であっても、公的医療保険の加入者は保険料に上乗せして強制的に徴収されることになる。野党が「事実上の増税だ」と批判するのは当然だ。

 岸田首相は国会で賃上げ、医療・介護分野での歳出削減による社会保険負担の軽減などを理由に「実質的な負担は生じない」と説明する。しかし現状では賃上げは物価高に追い付いていない。歳出削減によって医療・介護サービスの低下も懸念される。理解に苦しむ論法ではないか。

 「月500円弱」とされる徴収額は医療保険の種類や所得によっても異なる。与党からも説明不足と批判が出ている。「計算が困難」としていた政府も、ようやく加入する医療保険ごとの徴収額を新たに試算して公表する方針を固めている。

 低所得者については軽減措置もある。その対象や軽減額などを明らかにする必要があろう。国民負担に関わる肝心なデータこそ包み隠さず開示すべきだ。

 支援金の負担が子育て世代ほど大きくなることはないのか。この名称で国民から徴収することの妥当性などとともに国会で徹底的に議論する必要がある。

 国として全国一律に進める少子化対策とは別に、自治体による地域事情を反映した独自対策の充実も急がれよう。ただし、自治体の財政状況は一様ではない。

 コロナ禍が一段落して、東京一極集中が再び加速している。その東京都と都内自治体が2024年度から新たな子育て支援策を打ち出す。都は都内在住の高校生の授業料を実質無償化。都や都内自治体は給食や一部学用品の無償化などを進める。

 地域間格差を拡大しないため地方の財源が乏しい自治体に対する国の支援が必要な場面ではないか。「一極集中の是正」をかけ声倒れにしてはならない。

 子育て支援継続には安定財源確保を図ることが欠かせない。無駄な歳出を徹底して洗い出すなど、国民負担を仰ぐ前にすべきこともあるだろう。岸田首相には財源にも責任をもった子育て支援対策の推進を求めたい。