女性トップ次々 破った「ガラスの天井」(2024年2月11日『沖縄タイムス』-「社説」)

新年度を前に、各界で「初の女性トップ」のニュースが続いている。

 日本航空は、鳥取三津子専務を4月1日付で社長とする人事を発表した。日航で女性が社長となるのは初めてで、客室乗務員出身としても初となる。世界的な航空会社だけに、女性社長の誕生は大きな話題になった。

 法曹界では、日弁連の次期会長に元東京弁護士会会長の渕上玲子氏が選出された。弁護士、検察官、裁判官の法曹三者で女性がトップに立つのは初。会長選で強く訴えたのは選択的夫婦別姓制度の実現だった。

 さらに先月開催された共産党大会で、田村智子氏が新委員長に就任。創立102年を迎える日本共産党に女性の委員長が誕生するのは初めてだ。

 労働組合ナショナルセンター、連合初の女性トップとして700万人近い組合員を率いる芳野友子会長も再任され2期目に入っている。

 それぞれの就任に当たってのあいさつを聞くと、周りが騒ぐほど女性だからという気負いは感じられない。むしろ重ねてきた経験に裏打ちされた自信、道を切り開きたいという使命感のようなものを感じた。

 もちろん女性だから選ばれたわけではない。ただ後に続く女性たちにとってロールモデルの存在は心強く、足元を照らす光となるだろう。

 日本は女性登用で世界の潮流から大きく取り残されており、相次ぐ女性トップの誕生は時代の要請ともいえる。

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 キャリアも能力もあるのに、トップに近づけば近づくほど昇進を阻む見えない性差別のことを「ガラスの天井」と呼ぶ。

 英誌エコノミストの「ガラスの天井」を指標化した2022年のランキングで、日本は29カ国中28位だった。最下位は韓国で、日韓両国は7年連続で同じ順位に甘んじている。

 実際、日本企業の女性管理職比率は13・2%にとどまっている。働く女性が増える中、これが女性の実力を反映した数字だとは思えない。

 男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。必ずしも男女差別をなくすのに十分な内容ではなかったが、現在、社会で指導的地位にある女性たちは均等法世代ともいえる。

 女性トップ誕生の流れを、高くて硬い「ガラスの天井」を打ち破り、そしてなくす契機としたい。

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 女性の働き方や職場の風景が変わりつつあるのに比べて、歩みの遅さが目立つのが政治分野だ。

 言うまでもないが、女性首相がいまだ誕生していないこと、女性閣僚や議員が少ないことが、世界との差を広げている。

 社会進出に悩み、苦しむ女性たちの現状を変えるには、政策決定に女性の声を反映させ、男性中心の組織風土や働き方を変えていく政治のリーダーシップが求められる。

 男女平等はもちろん、競争力の強化、多様性が尊重される社会実現のためにも女性登用は欠かせない。