◆自民が公認を出していない2氏にも「推薦」
公明は16日時点で、自民を非公認になった12人を含む計46人の出馬した裏金議員のうち、76%にあたる35人を推薦。不記載額が2954万円と多額の埼玉13区の三ツ林裕巳、安倍派幹部だった兵庫9区の西村康稔の両候補は自民から処分を受け、無所属となったにもかかわらず、推薦して支援する。
石井氏は、裏金議員への推薦について(1)地元の公明党員・支持者への謝罪や、使途の十分な説明(2)公明への貢献度(3)地元の公明党員らの納得感といった3点を基準に判断すると説明。政治不信が高まっているとして、厳しく対応する考えを示していたが、結局、多くの候補が推薦された。
◆「ひとえに票のバーターが必要」だから
裏金事件の実態や使途の解明がうやむやなのに、あえて推薦を出した背景には、自民との選挙協力の重みが増していることがある。公明の比例票は近年減少傾向にある上、埼玉14区に初挑戦する石井氏をはじめ、東京、愛知、大阪など小選挙区に11人を擁立し、苦戦も見込まれている。
そんな中、公明が推薦した三ツ林氏の地盤だった旧選挙区の一部は、小選挙区の「10増10減」に伴う区割り変更で、埼玉14区に組み込まれ、石井氏への支援が期待できる。西村氏と同じ兵庫県では、公明は2区と8区に擁立して必勝を期す構えで、公明関係者は「ひとえに票のバーターが必要」と打ち明ける。
それ以外の地域についても「日ごろから協力関係が築けていれば推薦は出す」と指摘。公明支持者は「自民の比例重複がなければ、比例票は公明に回してもらえる。『批判を受けても、支援してくれた』と自民側は評価し、より熱心に動いてくれる」と見返りを期待する。
◆結党時には「腐敗政治と断固戦う」と主張
集票のために背に腹は代えられないとはいえ、公明党は結党時に「腐敗政治と断固戦う」と掲げ、クリーンさを売りにしてきた。自民の「政治とカネ」の問題に厳しい姿勢をアピールしてきただけに、自公の蜜月ぶりを印象付ける裏金議員への推薦は国民の失望を招きかねない。
立民の野田代表は「地域から上がってきたから認めるのは党のガバナンス(統治)としておかしい」と対応を疑問視。共産党の田村智子委員長は「派閥の組織的犯罪という認識を欠いている」と公明を批判する。