◆「台湾独立勢力を震え上がらせる」
東部戦区によると、演習は台湾北部、南部、東部のほか、台湾海峡などを区域とした。各戦区の陸海空軍とロケット軍が参加し、港湾封鎖や海上、陸上の目標への攻撃といった演習を実施。統合作戦の実戦能力を検証したとみられる。14日、演習は「成功裏に完了した」とした上で「今後も戦闘準備を強化し、独立勢力を打倒する」とした。
今回の演習名は「連合利剣-2024B」。5月に実施した「2024A」に続く大規模な軍事演習となる。東部戦区の李熹(りき)報道官は演習にあたり発表した談話で「台湾独立勢力を震え上がらせる。演習は国家主権を守り、国家統一の正当性を堅持するために必要な行動だ」と強調していた。
台湾国防部(国防省)は14日の談話で「非理性的で挑発的な軍事演習で、ルールに基づく国際秩序を脅かすものだ」と非難し、紛争の激化を避けながら警戒を強化する方針を示した。15日には台湾周辺で同日午前6時までの25時間に過去最多となるのべ153機の中国軍機の活動を確認したと発表した。
頼総統は10日の演説で「中国に台湾を代表する権利はない」と述べるなど、中国による台湾統一を認めない立場を強調していた。
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◆前回より台湾に近く、区域も増加
【北京=河北彬光】中国軍が14日実施した大規模演習は5月の前回よりも台湾本島に接近し、包囲の密度も高まった。台湾の頼清徳(らいせいとく)総統の演説内容への対抗措置を演習の口実としたが、実際には台湾統一に向けた「実戦経験」を積み重ねる狙いがあるとみられる。日常的に軍機などで台湾を脅かす行動も急増し、着々と現状変更を試みている。
中国軍が公表した演習図によると、台湾本島を取り囲む演習区域の数は前回の5カ所から6カ所に増えた。前回はなかったとみられる空母「遼寧」が参加し、薄暗い早朝から軍機が飛び立つ映像も公開。「台湾独立勢力が隠れて逃げる空間はない」。中国軍事科学院の専門家はこう強調し、国営メディアもこぞって頼氏批判を繰り返した。
◆「休戦ライン」越えの活動が急増
頼氏は10日の演説で、5月の総統就任時に続いて中台は「互いに隷属しない」と再び述べたが、全体的に中国に対するトーンは弱まったため、米国や台湾の専門家の間には中国が大規模な演習に踏み切らないとの観測もあった。現実にはこうした楽観論を打ち消す結果となり、中国が台湾包囲網をさらに狭めて統一への意志を鮮明にした形だ。
中国の習近平主席(資料写真)
演習に限らず、最近は中国軍機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線を越える回数も増えている。台湾国防部(国防省)によると、頼氏就任前の1月は延べ36機だったが、就任3カ月後の8月には延べ193機と5倍以上に急増。台湾周辺で活動した軍艦も2倍の延べ282隻に上っている。
◆「侵攻の可能性は?」台湾市民は冷静
米シンクタンクは、中国が軍事力で台湾を取り囲んで封鎖し、徐々に締め付ける手法で統一をもくろんでいるとして、蛇になぞらえ「アナコンダ戦略」を続けていると指摘。台湾国防部の幹部も今月、英誌エコノミストでこの呼称を使い、常態化した危機を訴えた。